『チェイン・リアクションズ』は『悪魔のいけにえ』(74年)という映画とそれが個々人にもたらした衝撃について、5人が語る姿を収めたドキュメンタリーであり、インタビュー集である。登場するのはコメディアンで俳優のパットン・オズワルト、映画監督の三池崇史、映画評論家アレクサンドラ・ヘラー゠ニコラス、作家のスティーヴン・キング、そして映画監督のカリン・クサマ。
あらゆる境界を侵犯する作品
同作で興味深いのは、同じ『悪魔のいけにえ』という作品について、全く異なる解釈が私的な確信として語られるところにある。「ドキュメンタリーとしか思えない、現実味溢れる恐怖映画」が、同時に「ベルイマンやタルコフスキーに匹敵する、忘れがたく、精緻なフレーミングに満ちた作品」でもある、というのは驚くべきことのように思えるが、『悪魔のいけにえ』の場合はどちらも無限に正しい。『悪魔のいけにえ』はあらゆる境界を侵犯する作品であり、映画のカテゴリーという「境界」も例外ではない。それを可能にしたのは、この映画の持つ圧倒的な他者性である。
『悪魔のいけにえ』をカテゴライズせんとする試みの一つに、「バックウッズ・ホラー」という概念がある。これは広義の「ヒックスプロイテーション」の下位ジャンル「ルーラル・ゴシック」をさらに分解した概念で、孤立し退化したアメリカ僻地の「家族」を恐怖の対象とするジャンルだ。こうした恐怖の「家族」の元型は20世紀初頭アメリカでの優生学の興隆や、それに先行する19世紀の血統退化への不安だ。「バックウッズ・ホラー」の特徴は、ヒルビリーの他者性を辺境性のみに限定せず、社会的・道徳的な堕落と、その「原因」としての近親姦(への忌避感情)に目を向けたところにある。

