ラオスの国情を無視できない
見えないおカネの流れがあり、本来であれば、ファイナンスとマネジメントにも手を入れるべきだろうが、「ラオスの国情を無視できない。日本人には正義でもラオス人にはちがうこともあります」と谷島社長。
そこで、考えたのは別組織を設立することだった。既存のバス公社を「City1」として、その下に新組織「City2」を2017年に設立し、日本流のマネジメントで新規に人員を募集、日本に連れてきてイーグルバスで訓練をした。
「従来は毎日、運転士が15時間も働き、休みもない労働環境でした。そこで、ノルマはなくし、固定給与システムで、1日8時間、週1回休みという制度にしました。従来の運転士より手取りは減りますが、ラオスの人達は自由な時間を大切にするので、喜んでくれました。後は、若い女性を車掌として採用し、ユニフォーム姿で運賃を集めるので、好評です。運賃箱も設置しました。運転士の乗客への挨拶も義務化し、車内アナウンスを実施、運転士の業務開始前アルコールチェックも行っています」
ショッピングモールをハブにする
2017年11月から市内2路線の運行を開始、2018年1月からは空港路線もスタートした。
イーグルバスの改善システムには「ハブ&スポーク」という手法がある。これは、ハブとなるバスセンターを設置し、そこから東西南北に路線を延ばす方法だ。効率的に運行ができる。
ビエンチャンでも郊外のショッピングモールをハブとしてバスターミナルとバス車庫を作った。モールとしては集客効果が期待できるので、用地を提供し、建物も建設してくれた。City2にとっては費用もかからず、効率的な運行ができ、なおかつショッピング客に喜ばれるのだから一石二鳥どころか、一石三鳥だ。
日本の貢献度合いをアピールすべき
「ラオス政府やバス公社には、高額すぎるのでバス車両を買うという意識はありません。しかもメンテナンスのやり方を知らないので、車両がどんどん劣化する。日本政府も過去、車両をプレゼントしてきましたが、ここに来て中国がまとめて100台の新車を無償提供しました。バス公社としては本来は市内に新車両を走らせたいのでしょうが、日本に気を遣い、郊外で新車を使っています」
日本はバスについても過去、ラオスに対して大きな貢献をしているのだが、PRべたというか、その貢献度合いがあまり伝わっていないようだ。ハードのみならず、谷島社長の活動などソフトの提供もしていることをビエンチャン市民に対しても、もっとアピールするべきだろう。
「経営も軌道に乗り、親会社のCity1でも一部の路線をCity2方式で運用し始めました。ラオスは5カ国に囲まれているので、今後はラオス自身をハブとして、中国、ミャンマー、タイ、カンボジア、ベトナムをつなぐ拠点に発展できればと思っています」
谷島社長のバス改革は、ラオスにインバウンドを呼び込むきっかけにもなりそうだ。
(#3へ続く)