結婚と出産を経て、変化はあった?
──そんな美香子が犯罪をきっかけに覚醒するのはある意味成長譚であり、型にはめられた女性の逆襲とも言えます。
そうですね。女性が観た時に気持ちよくなってほしい、素直に面白かったって言ってもらえる作品にしたいと考えていました。なにも起こらない日常、つまり“普通”はいいことなんですが、毎日だと苦しい。退屈を感じる女性にこそ観ていただきたいです。
──結婚と出産を経た田中さんが主婦を演じるにあたり、その経験が演技に反映されたことはあるのでしょうか?
特に変わりませんが、現実問題として時間の使い方は変わりました。台本を読み込む時間など、生活のなかでなにを優先するのかについてはすごく考えるようになりました。実際に映画館に行く時間もそう。私にとって大事なインプットの時間なので優先順位は高いです。空いた時間は、役者として成長できる機会にしたい。やっぱり、常に危機感は持っています。
──意外です。映画はもちろんドラマにもコンスタントに出演を続けているのに。
子どもが生まれたあとは、お芝居をする機会が少なかった時期もあったんです。周囲の方々に気遣っていただいてのことだと思いますが、それは恐怖でした。お芝居の仕事がなかったらどうしようという気持ちは出産前からずっとある。台本をいただかないと人間としてダメになっちゃうんです、私。だから常に何かの役を演じる自分でいたいし、お芝居しなかったとしても常に作品の準備をしている自分でいたいんです。
──キャリアとしては円熟期にあると思いますが、“演じること”に変化はありますか?
変わりません。私にとって、ずっと生きる意味です。
写真=深野未季/文藝春秋
岩田麻希=スタイリング
RYO=ヘアメイク
たなか・れな 1980年、福岡県生まれ。1998年にサントリー「なっちゃん」のCMで注目を集め、同年『がんばっていきまっしょい』で映画初主演。日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞した。以降、『はつ恋』(00年)、『ドラッグストア・ガール』(04年)、『幼な子われらに生まれ』(17年)など映画を中心にドラマ、舞台などで幅広く活動し、多数の女優賞を獲得している。
INTRODUCTION
デパートで金が盗難され主婦が逮捕──2013年に世間を騒がせた事件に着想を得て、金に魅せられた主婦が一世一代の大博打に挑むクライム・ストーリーをコメディ要素たっぷりに映画化。主婦・美香子を演じるのは『幼な子われらに生まれ』(17年)や『福田村事件』(23年)などの演技が高く評価されている田中麗奈。美香子を利用しようと目論む金販売会社の社員を森崎ウィンが演じる。監督は『夜を越える旅』(22年)などで注目が高まる萱野孝幸。劇中登場する総額数百億円の金工芸品も見もの。
STORY
怠惰な日常を過ごしていた専業主婦の美香子は、ある日訪れたデパートの展示会で株式会社SGCが販売する純金のおりんを“つい”盗んでしまう。金の魅力に取り憑かれて世界が一変した彼女は「私にしかできないことをする」という幼き日の夢が蘇り、「100億円の秀吉の金茶碗を盗み出す」という大胆な計画を企てる。しかし、美香子を利用しようとするSGC社員・金城との駆け引きや、なし崩し的に共犯者となった夫の浮気などトラブルが続出。果たして美香子は金茶碗を盗み出せるのか?
STAFF & CAST
監督・脚本:萱野孝幸/出演:田中麗奈、森崎ウィン、阿諏訪泰義、石川恋、岩谷健司、中村祐美子、勝野洋、宮崎美子/2026年/日本/112分/配給:キノフィルムズ/©2025『黄金泥棒』FILM PARTNERS.

