——フォーラム部門のプログラマーが、本作を「社会批評的ホラー」と紹介しました。この表現はしっくりきてますか。

岩崎 しっくりきてます。ホラー映画の体験の中でのみ怖さが完結するのは、僕としてはちょっと味気ない。見終わった後に持ちかえるものがあった方が良いと思うので、批評性は大事にしています。例えば 「我々も堺みたいに、生きながらにして死んでるなあ」って思ってくれればいいし。コンビニの話というよりは、 コンビニみたいな人間の話です。「死ねませんね、残念です」「人生は続きますね、残念です」というのを、みんなにも感じてほしかったですね。

©『チルド』製作委員会(NOTHIONG NEW・東北新社)

なんで人は笑うのか? 答えは「ズレ」にある

——上映では大きな笑いが起きてました。

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岩崎 コンビニの勤務をシンプルに描写するだけで笑いが起きるので、 やっぱり日本って相当滑稽なのかと。それが面白いと思って僕も映画にしてますが、実情を知らない海外の人も面白いということは、ある程度、普遍的な感覚だと思いました。

——もともとコメディにしようと思ってなかったのですよね。監督の「笑い」の感覚はどこから来たものでしょう。

岩崎 僕はもともと「笑い」にすごく興味があって、大学で研究もしてました。

岩崎裕介監督

——大学でですか?!

岩崎 慶應大学文学部の美学美術史学専攻で、美学も哲学もやるんですよ。その中で笑いのルーツとか、「なんで人は笑うのか」とかを考えたり。哲学だとベルクソンがやってるんですけど、普通に解明はされてないんで。普通にムズ過ぎるってなっていて。

——それで、なぜ笑うのかはわかったのですか。

岩崎 それは「ズレ」ですよ。ちょっと普通とは違うものに出くわすと、人は反射で笑ってしまうとか。あとは「攻撃」ですね。笑いの対象を、人は基本、見下しているんで。防衛本能みたいなものもあるし。基本は緊張と緩和でしょうか。一番大きいので言うと、緊張状態になった人間が少しでも弛緩すると、体の反応として笑ってしまう。 そこら辺とかが面白いと思っていました。

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——それを卒論で書かれたのですか。

岩崎 卒論です。

——完全に映画で活かされてましたね(笑)。

岩崎 めっちゃ活きてます。自分の作るCMもコメディではないですが、やっぱり全部笑えるんです。普通のヒューマンものですが、ちょっと気まずいみたいなのが好きで。「笑かしてくるもの」よりは「笑えてしまうもの」の方に趣を感じますね。『チルド』もそうですよ。必死に生きている人間の方が面白いんで。店長の今井はちょっとかわいそうですが、好きなキャラです。