1ページ目から読む
3/3ページ目

以前の自民党だったら石破茂をとことん「利用」しただろう

 そのせいか、石破氏は論戦すらできない状況になっている。8月22日の新聞は壮観だった。

「論戦したい石破氏 敬遠したい首相側」(朝日新聞 8月22日)

「石破氏 焦がれる直接討論」(読売新聞 8月22日)

ADVERTISEMENT

「首相 短期戦で石破氏封じ」(毎日新聞 8月22日)

 同じ日に3紙が同じ論点で記事を書くという「異常」。

©文藝春秋

 朝日には「首相周辺」の言葉が載っていた。

「総裁選は党員や党所属議員ら限られた人にしか投票権がない。一般人にも届くような討論会をしても仕方ない」(首相周辺)

 この事態はさらに「総裁選 討論会大幅減へ」(産経 8月24日)となった。

 首相は総裁選の期間中にロシアに外遊に行く予定(9月11日~13日)なので、自民党は討論会や街頭演説の機会を大幅に削減する方針だという。

 石破茂にモリカケ問題をツッコまれるのが嫌だから討論会や街頭演説も減らすようにみえる。しかも(冒頭で紹介した記事のように)石破氏の地方での活動をできなくさせようとする。やはり今回の総裁選はヘンだ。

 私は思うのだが、以前の自民党の狡猾さだったら石破茂をとことん利用しただろう。安倍首相と並ばせてどんどん批判をさせただろう。そうすれば総裁選がガス抜きの場になる可能性がある。そして国民を注目させ、選挙が終わったら壇上で「一致団結」をアピールする。総裁選は自民党のPRにもってこいの「興行」であったはず。

 しかし現状を見ると首相批判はNGで総裁選の期間も事実上短くする。ライバルは集会ひとつ開催するのにも苦労している。

©文藝春秋

首相の政治姿勢を批判することは封印

 遂には「石破氏、キャッチフレーズ『正直、公正』を封印へ」という事態となった(朝日新聞デジタル 8月25日)。

 つまりモリカケ問題を批判することは封印、首相の政治姿勢を批判することは封印ということである。

 この報道後、フレーズは変えない発言もしたが大事なところでふらふらするいつもの石破茂感もある。どうせなら今こそ「自民党、感じ悪いよね」(石破氏2015年の発言)を旗印にしたらどうだろう。

 それにしても、すべて可視化されてしまう時代にはこういう形で圧勝したらむしろ今後に響くはずだ。今の自民党の狭量な態度が可視化されるということだから。

 今回は「興行としての総裁選」ヘタだな、と私は思うのですが。