中学1年生でヤンキーになり、北関東のレディース「魔罹啞(マリア)」の総長を務めた廣瀬伸恵さん(47歳)。2度の逮捕と服役を経た彼女は現在、建設会社「大伸ワークサポート」の社長として、刑務所や少年院の出所者を社員として受け入れている。43名の社員のほとんどが前科持ちだという。

廣瀬さん 写真=志水隆/文藝春秋

「変わらなきゃいけない」刑務所内での出産が転機に

 廣瀬さんが更生を決意したのは、服役中に出産したことがきっかけだった。手錠と腰縄をつけたまま分娩台に乗り、刑務官3人が無言で立ち会う中で子供を産んだ。

「産んだ瞬間、抱っこした瞬間に、今までの生き方じゃ駄目だなって強く思ったんです。そんなこと思ったの生まれて初めてで。刑務所に行っても反省なんてしたことないのに、この子のために私は変わらなくちゃいけないなって」

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 しかし出所後の道のりは険しかった。過去を隠して働いてもいつかは露見し、「刑務所上がりの人とかちょっと無理」と自主退社を迫られた経験もある。そんな折、子供の父親から土建業者を紹介され、過去をオープンにしたまま働ける環境に出会った。「仮面をかぶらなくていいからストレスにならなくて、居心地のよさも感じた」と廣瀬さんは語る。その後、31歳で自ら会社を立ち上げるに至った。

写真=志水隆/文藝春秋

 採用の基準は、「私だったらやっていたかな?」という問いだという。バイクの窃盗も、理不尽な暴力への報復も、自身の経験と照らして共感できる相手には何度でも面会に行く。一方、性犯罪については「完全にノー。絶対にやらないし、分かり合えないから」と一線を引く。

 裏切られることも多い。会社の金を持って逃げた社員もいた。それでも廣瀬さんは「自分のせがれだと思ってますから」と追いかける。他の会社でひどい目に遭って「やっぱり俺の居場所はここなんだな」と戻ってくる者も少なくないという。

 刑務所制度への問題意識も率直だ。「犯罪を犯した人を更生させて社会復帰させる場じゃなきゃいけないのに、ただ単に社会から隔離すればいいだけの場所になっている気がして」と廣瀬さんは言う。悪いコネを刑務所内で新たに作る場になっている現実も指摘する。「誰かを思う気持ちや愛情が一番人を変える」という信念のもと、彼女は今日も出所者たちの「お母ちゃん」であり続けている。

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