高卒で工場に勤務していた男性が「ホームレス」になったワケ

 その理由を明らかにするには、彼のこれまでの人生経験から話すのがよいと思う。

「母親は元々美容師でしたが、結婚してから美容の仕事をやめて父親と一緒に働いていました。うつ病を抱えていたので、精神状態が時々不安定になり、睡眠薬を飲んで休んでいた印象があります。親同士の関係はギクシャクしていて、ちょっとしたことで口論になり、父親がお皿を投げるのを何度も見ました」

 高校卒業後、宇海くんは大学に行くことは考えなかった。最初はプラスチック成形の工場に就職したが、半年働いて辞めた。その後は接客業に従事し、飲食店やカラオケなどを転々としてきた。宇海くんは25歳のとき、彼女ができたことで、両親から離れて同棲生活を始めた。親の仕事の収入が不安定なので、仕送りをしていた。

ADVERTISEMENT

「息子としての親孝行で(仕送りを)するべきだと思っていました。でも、お金を受け取った親は、感謝の言葉を一切言ってくれなくて、当たり前のように僕のお金を使ってしまったのです。僕はいい気持ちはしませんでした」

主な収入源はアルミ缶の収集 ©趙海成

 同棲生活をしていた彼女とは、3年付き合ったが別れてしまった。

「彼女は僕と将来結婚するつもりでした。ただ、僕はこのような家庭環境で育ったため、結婚に対して良い印象を持っていなくて、結婚するという考えが全くなかったのです。これが別れた原因だったと思います」

 その後、30歳のときに再び彼女ができて、彼女は妊娠したが、大学を卒業して仕事に就いたばかりでまだ子どもを望んでおらず、宇海くんには相談せずに中絶したという。そして付き合って2年目のときに別れた。

 彼が言うには、理由は前と同じく彼の結婚に対しての恐怖心だった。

 それからしばらく、1人の生活が続いた。

「僕はほとんどアパートに引きこもる状態を、お金がなくなるまで続けた。人と会いたくないし、働く意欲も失い、お金も減って、何もかもうまくいかないように感じた。こんな風に生きていくことは全く無意味なので、自殺しようと考えたこともあった」

 自分自身の状況が悪い上に、家族にもまた不幸なことが起きた。