母親が川に飛び込み、自殺を……
親同士のケンカが原因で、母親が川に飛び込んで自殺しようとしたのだ。幸い川の水が浅かったので、母親の命は救われたという。
その後、母親は生活保護を受け、福祉施設に入所し、心身が一応落ち着いた。父親も生活保護を受け、以前のアパートでどうにか平凡な暮らしを送るようになった。
そして半年前、父親から連絡があり、母親と離婚したことを知らされたという。それを聞いた宇海くんは、良い結末として受け取った。
「生活で両方疲れてたので、それやったらもう別れたほうがいいかなって」
以前から彼はずっと、両親の生活や彼らの関係について心配していたと同時に、自分の将来の行方に戸惑っていた。今では両親について心配する必要がなくなり、自分が解放された感じになったという。
ようやく行きたいところに行き、やりたいことをやれるようになった。
宇海くんは昔から、ホームレスに対して見下すことはなく、路上生活に対する抵抗もなかった。むしろ、いつか自分もホームレスになってみようと思っていたという。今、そのチャンスが来たのだ。
事前に情報収集も行った上で、ホームレスになった
そういうわけで、彼は40年以上住んできた大阪に別れを告げ、まだ見知らぬ東京に向かった。
大阪を出る前に、東京のホームレスに関してインターネットでたくさんの下調べをした。その中でも、YouTubeで荒川河川敷のホームレスの生活を記録した動画や、Yahoo!ニュースで公開された私の連載が、宇海くんに大きな影響を与えた。
荒川河川敷の生活条件は厳しくとも、自然環境が美しく、缶を集めれば生計を立てられることも彼は知った。特に、この連載で紹介したホームレスの大先輩2人――桂さんと征一郎さんがとても印象的だったという。
宇海くんは、この2人の先輩を師匠とすることを決心した。桂さんに釣りのテクニックを学び、征一郎さんにアルミ缶を売ってお金を稼ぐ方法を学ぼう――と。
東京に着いた後、大きなスーツケースを引っ張って歩きながら、荒川下流の葛飾区にある平井大橋付近を出発し、合わせて10個以上の橋のふもとを通ってついに目的地にたどり着いた。
道中で出会ったホームレスに話しかけて、生活経験についていろいろ教えてもらった。その中には優しい人もいれば、少し乱暴な人もいたが、彼は「新米」として、腰を低くして相手の話を聞いた。
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