投資の最適解は……
2024年に新版を出すにあたり、新NISAの章を加え、一部のデータを更新しましたが、基本的な内容はほとんど手を加えていません。その理由は、この本で解説している理論が、確立されたものだからです。
金融市場は、他の社会科学の分野と違い、日々の価格など膨大なデータがすべて手に入ります。1960年代には、すでに優秀な経済学者たちが「株価データを統計的に解析すれば、最適な投資法が数学的に導けるはずだ」と気づいていました。
政治学や社会学では、データがないため主観的な議論になりがちですが、金融市場は違います。しかも、その研究で成功すれば有名になれるだけでなく、億万長者にもなれる。これほど強いインセンティブはありません。
その結果、数学の天才たちが金融の分野に殺到し、わずか10年ほどで「金鉱」はすべて掘り尽くされてしまいました。
そうして生まれたのが「モダンポートフォリオ理論※3」です。いくつかの前提条件はありますが、それが満たされれば数学的にその正しさが証明されていて、多くの学者がノーベル経済学賞を受賞しています。1+1が2であるのと同じように、もはや動かしようのない結論が出ているのです。
その結論とは、非常にシンプルなものでした。「インデックスファンドを買っておけばいい」。
ただ、この結論は証券業界にとっては非常に都合が悪かった。「私が儲かる株を教えてあげます」というビジネスが成り立たなくなってしまうからです。
そのため、「学者の言うことなんてデタラメだ」と強い反発がありましたが、何もしないインデックスファンドの方が、高給取りのファンドマネージャーが運用するアクティブファンドより平均的に成績が良い」という不都合な事実が繰り返し示されたことで、もはや言い訳のしようがなくなりました。
こうして、インデックス投資が最適解だと広く認められるようになったのです。
インデックス投資の最大のメリットは、タイパがいいこと
私が考えるインデックス積立投資の最大のメリットは、「タイパ(タイムパフォーマンス)」が良いことです。
株式投資の勉強は、本当に大変です。私自身、30代半ばで興味を持ち、株式データをすべてパソコンに取り込んでExcelで解析し、統計学の教科書を読みながらモダンポートフォリオ理論が本当に正しいのか検証したことがあります。しかし、普通の人はそんなことをするほど暇ではないでしょう。
企業の有価証券報告書を読み込んだり、一日中パソコンの前に座ってデイトレーディングをしたり、そういったことが好きな人はやればいいと思いますが、ほとんどの人は、仕事や勉強、恋人と過ごす時間や「推し活」など、他にやりたいことがたくさんあるはずです。人生のすべてを投資に捧げたいわけではないでしょう。
その点、インデックスファンドの積立は、投資対象も「オルカン」やS&P500など数種類しかなく、どれを選んでもパフォーマンスに大差はありません。一つ決めてクレジットカードで積立設定をしてしまえば、あとは60歳、70歳になってお金が必要になるまで、何もする必要がないのです。
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※1ライブドア事件…2006年、ⅠT企業ライブドアが粉飾決算などの疑いで強制捜査を受けた事件。当時の社長・堀江貴文氏が逮捕され、株価が暴落するパニックを引き起こした。証券取引のルールや、企業買収のあり方を問う大きな契機となった。
※2インターネットバブル…1990年代後半、インターネットの普及によりIT関連株が異常に買われた現象。実力以上に評価された企業も多かったが、2000年にバブルが崩壊。多くの企業が淘汰されたが、生き残った企業が現在のデジタル社会の基盤を築いた。
※3モダンポートフォリオ理論…リスクを最小に抑えつつ、リターンを最大にするために「どのように資産を組み合わせるべきか」を説いた投資理論。分散投資の効果を数学的に証明したもので、現在のプロの運用やロボアドバイザーの基礎となっている重要な理論だ。



