「LGBTなんかいらない」
ステージ上でスライドを使った120分の講演内容のうち、「落ち着きがない子どもだった」との幼少期や、参政党の結党エピソードが前半。主題の「情報戦で負け続ける日本人」が後半部分で、ちょうど半々ぐらいの構成だった。
結党までの秘話として、実は神谷が「維新の会」の名付け親であること、橋下徹と袂を分かつ際に松井一郎から電話で「潰すぞ……」と言われ、「潰せるもんなら潰してみろ!」と威勢良く言い返したとの武勇伝が展開された。これはその後も鉄板ネタとしてよく使われている。なお、それらの話は橋下氏らに否定されている。
神谷は自らが石川県加賀市で拡げていたフリースクールにも言及し、「今の学校に行ったら子どもはバカになる」というような話を大展開していた。なお、自身の子は無事に公立小学校に入学させたことがウォッチャーらにより発掘されている。
残り30分を過ぎたあたり。「男女差別する時代ではない」と前置きはあったものの、少子化問題に関して「戦後共産主義が進めてきたような、やれ『ジェンダーフリー』だ『ウーマンリブ』だとそこから進めるからおかしくなる。順番がおかしい」と語りだし、不穏なことを言いそうな空気になった。
小中高生の女子に「子どもを産める自分の大切さに気付かせる」教育をし、男女ともに不妊にならないような食や生活習慣を伝えていくことが肝要だそうだ。そして、ひときわ大声で「その方(女子に子どもを産める教育をした方)がLGBTの百倍効果がありますよ」と言うと、会場からじわじわと拍手が起こった。
これで支持を得たと思ったのか、神谷は少し思案して自信満々にこう言ったのだ。
「LGBTに理解を示す前に、子どもを産み育てることに理解を増進しないと。そういうことをやってくれるとすぐ岸田政権(当時)の支持率は上がると思います。いや、本当に。だからみんなで言わないといけないんですよ。LGBTなんかいらないと、理解増進なんかしなくていいと。それよりも僕がいま話した少子化の話とかそっちの方がよっぽどいい」
陰謀論者の特徴
少子化問題と全く別の話なのに、教育を絡めて強引に反LGBTと結びつけた。当時はLGBT理解増進法が可決され、施行されたばかり。参政党は一貫して同法案には反対し、これものちにメディアから批判されることだが、旧態依然とした男女観や家庭思想を持っていた。そうした思考に陥ると何を指摘されても自分たちの浅慮を省みることは難しい。批判してくる方が何かやましいことがあるからだとか、利権が絡んでいるからだとか勘ぐる。そのスパイラルに入り込むのが陰謀論者の特徴である。
この「LGBTなんかいらない」発言は、私がニュースレターで取り上げた後にネットでは話題になっていたものの、大手メディアが後追い報道をしなかった。自分の信用の無さを痛感したものだ。しかし、週刊文春の「言葉尻とらえ隊」で取り上げられることになった。このコーナーを連載している能町みね子さんが丁寧に連絡をくださって、私も詳細を伝えてすぐに使用を快諾した。以前からこのコーナーの大ファンだったので光栄だった。
世間がそこまで注目していない時期の、実はこれが参政党への初の「文春砲」だったと言えるかもしれない。発売されて話題になった後の街頭演説で、神谷は「文春に書かれたらしい」と持ち出し、「LGBTなんかいらない」の発言を「そんなこと一言も言ってない」と否定した。大嘘である。思いっきり言っていたし、その証拠はばっちりあるのだ。現職の国会議員の発言としては致命的なものだったと思うが、大炎上には至らず、命拾いすることになったわけである。
ただ、23年夏以降の参政党は、これで燃えて終わっていた方がマシだったかもしれないような苦難を味わうことになる。