「お母さんの最期は苦しんでね。寝ていた布団からはみ出して、こう、のけぞって喉をかきむしって……」

 兄嫁の母の死に際を真似する姿が、男の狂気を呼び覚ました。兄の家族8人を弟が殺害した昭和21年の凶悪事件。その驚きの結末を、鉄人社の文庫新刊『戦後まもない日本で起きた30の怖い事件』よりお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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弟を怒らせた兄嫁の物まね

 その後、戦局の悪化に伴い、中国・漢口、上海、北海道に通信隊員として転戦し敗戦とともに除隊。1945年10月に復員し、空襲で焼け出された跡地でバラック住まいをしていた兄一家宅に身を寄せる。

 自分を温かく迎えてくれた兄や兄嫁に、大橋は「全てを水に流そう」と決心し、しばらくは穏やかな日々を送る。が、3ヶ月後の1946年1月27日、夕食中に兄嫁が、母が死んだ際の様子を語ったことで思いは一変する。

「お母さんの最期は苦しんでね。寝ていた布団からはみ出して、こう、のけぞって喉をかきむしって……」

 苦悶の形相を真似る兄嫁を見て、大橋のスイッチが入った。