「お母さん、大変だよ!」――拡散された動画は、4歳の妹を“万引き犯”に仕立てたフェイクだった。SNSが生む憎悪は、なぜ子どもまでも標的にするのか? 難民家族を追い詰めるフェイク投稿の実態に迫る。
ジャーナリスト・池尾伸一の新刊『仮放免の子どもたち 「日本人ファースト」の標的』(講談社)より一部を抜粋・編集してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む)
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クルド人を追い詰める「フェイク投稿」
差別問題の専門家の間ではヘイトスピーチを放置すると、それに共感する人の裾野が広がり、さらにヘイトが過激化する「憎悪のピラミッド理論」が知られている。社会の中で、少数派の特定のグループへの誹謗中傷が放置されたままだと、同じように誹謗中傷する人たちが増え、やがてそのグループに対しては「自分たちと同じ人間ではないので何をしてもいい」という差別感情がエスカレートし、そのグループに属する人に、暴力を振るう人が出てくる。
さらに暴力も放置されると、やがて大量虐殺に事態はエスカレートするというものだ。関東大震災後に起きた朝鮮の人々の虐殺も、植民地となった朝鮮の人々への差別と、それを放置し、助長した政府の責任が指摘される。
クルド人へのヘイトも、クルド人を誹謗中傷するSNSの投稿や路上デモが放置されたことから歯止めなく拡大、子どもに暴力を振るう人間が出てくるまでの事態になっている。
政府は路上デモやSNS投稿で増幅された人々の不安を背景に「国民に不安が広がっている」として「不法滞在者ゼロプラン」を策定、クルド人を標的に強力に強制送還を推し進め、それがさらにクルド人への誹謗にお墨付きを与える差別の悪循環の加速につながっている。
しかし、クルド人へのヘイトが燃え上がるための「燃料」となったSNSの投稿の大半は、クルド人を誹謗するために作られた「フェイク(虚偽)」投稿だった――。
