「お玉は占うのがしんどくて、いつも渋々なんですけれど…」
お玉の元を訪れるのは、恋人との仲と親の決めた縁談との間で揺れる娘、やめ時を知りたい歌舞伎役者など多種多様。中には自分が何を占ってほしいのかわからない人物もいる。
「自分の状況や思いを他人に言葉で伝えるって、とても難しいことですよね。口に出してみて、ああ、と気づくこともあったりして。それは占う側にも言えることで、見えたものをどう言語化して伝えるかという点にお玉も頭を悩ませます。でも彼女の言葉はとても正直で、説教したりしない。相手は自ら何かに気づき、道を見つけます」
やがてお玉の元には、個性的な面々が集い出す。中盤以降はお玉以外にも不思議な力を持った人物が現れ、物語は勢いを増す。最後の短編「くらぶ者なき」では、思わぬ大物からの依頼がお玉の元に舞い込んで――。
「占ってもらいたい人のパターンとして、死期がわかっている人を出したいと思ったんです。いつ亡くなったか判明している歴史上の人物ですね」
その人物が誰であるかは、実際に本書を読んで確かめてみてほしい。
「お玉は占うのがしんどくて、いつも渋々なんですけれど、こう願いながら掌を合わせるのです。――この人の人生に幸あれかし、と」
朝井まかて(あさい・まかて)1959年大阪府生まれ。2008年小説現代長編新人賞奨励賞を受賞しデビュー。14年『恋歌』で直木賞受賞。近著に『どら蔵』『グロリアソサエテ』など。
