私の世代(1971年生まれ)には長年の夢があった。プロレスラーによるリアルファイトだ。それは第二次UWFを経て、現実のものになっていく。その結実のひとつが97年、“最強プロレスラー”髙田延彦vs.“400戦無敗の柔術家”ヒクソン・グレイシーを実現させるために誕生した格闘技イベント、PRIDEだった。
その後続いたPRIDEシリーズの興行を私は、テレビを含めればすべて追いかけた。本作のクライマックスである、2000年5月1日に行われた「PRIDE GRANDPRIX 2000 決勝戦」も東京ドームで観戦している。
“霊長類ヒト科最強”の壮絶半生
その決勝戦に出場した“霊長類ヒト科最強”と呼ばれた選手、マーク・ケアーが今作の主役だ。演じるのはプロレス界最大手WWEの元スーパースター、ザ・ロックことドウェイン・ジョンソン。製作は『ミッドサマー』(19年)、『関心領域』(23年)といった問題作や話題作を世に送り続けているA24。2年前にはプロレスラー、エリック一家の悲劇を描いた『アイアンクロー』(秀作!)を世に送り出した実績もある。
しかしできあがった本作は――実にわかりやすい、アメリカン・ドリームとそこからの転落劇だ。ケアーはオピオイド系鎮痛剤(プリンスの命を奪ったのもこれだ)にハマり、抜け出したと思ったら、アルコール依存症の恋人ドーンに振り回される。
プレスリリースには、02年に大手ケーブルテレビHBOで放送された同名のドキュメンタリーが「企画の原点」とある(当時、これを誌上再録した記事をスポーツ誌の『Number』で読み、胸が押し潰される思いがした)。本作はおおむねそのドキュメンタリーからの引用、焼き直しと言っても差し支えない。肝心のファイトが再現されているとは言い難く、当時の熱狂と興奮を知っている人ほど点が辛くなるだろう。
オリジナルの展開がないわけではない。気晴らしに恋人ドーンと訪れた移動遊園地で、ケアーはゴーカートを見て息が止まりそうになる。車がぶつかり合うのを見ていられないのだ。ポンコツになるまで――いやポンコツになっても衝突を続ける車は自分自身だからだ。脚本を兼ねたベニー・サフディ監督の演出が光ったシーンである。

