積水ハウスから騙し取った55億5000万円は、いったい誰の懐に消えたのか。裁判でも捜査でも解明されなかった“最大の謎”について、Netflixドラマ『地面師たち』のモデルとなった男、カミンスカス操が獄中から語り始めた。そして、「逃げ切った男」の存在が浮かび上がる。
積水ハウス事件の知られざる“その後”を『地面師vs.地面師 詐欺師たちの騙し合い』(講談社)より抜粋して紹介する。(全4回の2回目)
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消えた55億5000万円はどこへ?
2024年4月に初めて手紙が届いてから1年あまりが経っていた。この間、カミンスカス操から届いた手紙は18通にのぼっている。2025年4月22日付18通目の手紙は私を持ちあげるようなことを書いてきた。
〈さすがノンフィクション作家ですね。金の話を最後に聞いて来るとは! 一番核心の部分じゃないですか〉
地面師たちが積水ハウスから騙し取った55億5000万円がどこへ消えたのか。それは事件の核心であるが、たしかに警視庁の捜査や裁判でも明らかになっていない。カミンスカスをはじめ起訴された地面師10人の刑が確定している。しかし、その犯人のうち誰がどこに金を隠し持っているのか、他の地面師事件と同じく、そこはわからない。カミンスカス自身は一貫して積水事件で受け取った報酬は1億円だけだと言い張り、捜査当局もそこを突き崩せてはいない。それもあり、本人は冤罪を訴えているのであろう。
その一方で、事件後新たに浮かんだ事実もある。海喜館の売買仮契約から3ヵ月後、カミンスカスは都内のタワーマンションを購入していた。少なくともそのマンション代だけで優に1億円を超えるはずだ。仮契約に漕ぎつけたときの紹介手数料として受け取った1億円についてカミンスカスは、手紙の交信を通じて地上げの世界の兄貴分だった土井淑雄に3000万円、地面師グループの一員として逮捕された三木勝博にも4000万円を貸し付けたと言い放ってきた。半面、届いた18通目の手紙では、犯行直後に話題になったフィリピンパブなどでの豪遊ぶりについてこう嘯く。
〈もう1億円受け取る予定だったので、ちょっと調子に乗って遊んでしまいました〉
そして手紙は余裕綽々に次のように結んでいた。
〈森さんが私をどう見たのか楽しみに待ってます〉
