事件の裏で「逃げ切った大物地面師」がいた

 17人もの逮捕者を出した犯行グループの人間模様は、複雑怪奇というほかない。警視庁捜査二課の事情聴取においてカミンスカス自身は、もっぱら土井に誘われて取引に加わったと供述してきた。兄のように慕ってきた土井は、カミンスカスと同じく事件で懲役11年の実刑判決が確定している。一方、北田文明を取り逃がした、と地団太を踏む捜査幹部も少なからずいる。ほとんど報じられていないが、大物地面師の一人に数えられる北田は、積水ハウス事件で真っ先に海喜館の情報を入手していた。

「五反田の旅館女将はかなり重い癌のようだ」

 内田マイクや土井淑雄にそう伝えているのが北田だ。2020年5月29日の土井の一審判決要旨では、わずかに北田の動きに触れている。

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〈被告人(土井)は、平成28(2016)年11月頃、北田に頼んで、メールで本件不動産の公図及び登記情報といった資料の送付を受けた〉

写真はイメージ ©beauty_box/イメージマート

 つまり事件の仕掛け人でもあったのである。その北田について、カミンスカスの手紙はこう書いている。

〈北田は、土井の事務所にデスクをかまえていて、土井と同格の様に思われた。(中略)北田は積水の物件では、土井と内田の橋渡しをした事と、騙した金を現金化するのを手伝った〉(2024年8月26日付書簡)

 それゆえ警視庁も北田を首謀者の一人だと睨んで逮捕した。だが結局、当人は不起訴処分に終わっている。

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