松坂大輔の活躍が脚光を浴びるドラゴンズで、ドラフト6位の高卒ルーキーが1軍デビューを飾った。その名は山本拓実。9月11日に1軍登録されると、翌12日の甲子園球場での阪神戦で2ー8の7回から登板。右腕からの最速148キロのストレートを武器に2回を1安打2四球、3奪三振で無失点に抑え、「(緊張で)ホームまで30メートルに感じた」「ようやくスタートラインに立てました」と初々しい笑顔を浮かべた。
昨年のドラフト会議で、チームのしんがり6位で指名された山本拓。市西宮高では甲子園出場経験こそないが、昨年6月の練習試合では2度目の春夏連覇を今夏果たした大阪桐蔭高を相手に7回を3安打6奪三振、3失点と好投し、スカウトの評価を上げた。
ドラゴンズでは、ドラフト制度が施行された1965年以降、6位指名以下の高卒新人が1年目に1軍出場を果たしたことは過去になかった。その意味では歴史的な登板だったといえるが、裏返せばドラフト下位の高卒新人にとって1軍のハードルはそれほど高いということになる。
球団史上初の「6位指名以下の高卒1年目1軍デビュー」
高卒入団はよほど完成した選手でない限り、最初の数年間は体作りやプロの技術を磨くことにファームで費やす。ただ、これがドラフト下位の選手となると、試練は一層増すことになる。
ドラフトの指名順位は球団の期待値を表すものでもある。そのため、2軍の試合でも下位指名の選手はチャンスを与えられる場面が限られることが多く、そこで結果を出せないとチャンスが一層減っていくという負のスパイラルにはまってしまう。
さらに育成システムが確立されている球団であればいいが、時にはコーチにフォームなどをあれこれいじくり回され、つぶされてしまうケースもある。コーチとすれば、あまり注目されていないドラフト下位選手なら結果が出なくて当たり前。高卒なら契約金なども低いため、指導法の誤りが問題となって大事になることも少ない。逆に指導がハマって活躍すれば、自分の手柄とすることができる。プロ入りすると長所や個性が消え、存在感が薄くなってしまう選手がいるのは、そのような背景が一因となっていることもある。
このように見ていると、デメリットばかりが目立ってしまうドラフト下位選手。しかし、東大に入学するより難関とされるプロ入りを果たしたのだ。その実力は上位選手と紙一重といっていい。そこで、これまでの事例から、ドラフト下位から巻き返す方策を私なりに考えてみた。