トランプに「親書」を要求
ここで注目したいのは、北朝鮮側は米国側に対し、朝米会談実現に際して、ある前提条件を提示したことだ。これは先に述べた「核保有国として認めよ」という条件とは別で、消息筋によれば「会談の前に、まずはトランプ大統領から金正恩総書記に親書を送ってほしい」というものだったという。しかも、北朝鮮側は親書の内容まで指定してきた。
「親書の冒頭で『(トランプが)今回は金正恩総書記と個人的な関係として会えると良い』と書いてほしい、と求めた」(同前)
つまり、お互い国家を代表した立場ではなく、個人として会いたい、というのだ。敵対する国家の首脳同士が会談する際、「個人として会う」という関係が成立するとは思えない。しかし、それでも無理難題を要求した背景には、北朝鮮が置かれた苦しい外交的事情が透けて見える。金正恩は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領や中国の習近平、さらにはイランの顔色を窺わざるをえないからだ。
2022年のウクライナ戦争勃発以来、北朝鮮はロシアへの武器の販売と最前線への兵士の派遣により「北朝鮮史上、最高の輸出利益を生み出している」(別の消息筋)。さらに、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)等で北朝鮮は急速な進歩を遂げているが、これら先端軍事技術はロシアからの支援の賜物だ。米国と急接近することで、ロシアとの関係を悪化させることは避けたい。
※この続きでは、中国やイランなど諸外国と北朝鮮の微妙な関係について解説しています。約7300字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年6月号に掲載されています(朴承珉「金正恩『トランプ5月訪朝』極秘交渉」)。
