戦争はいつも大人が始める

 赴任中、四度の退避帰国をしましたが、その度に子どもたちには、こう詫びてきました。

「戦争とまったく関係なく、平和を望んでいる君たちに迷惑をかけてしまった。戦争を止められないのは私たち大人です。本当にごめんなさい。先生たちも命があってこそ授業ができるので、帰ります。だから、許してください」

2024年6月、2カ月遅れの入学式(学校ホームページより)

 その上で、こう続けました。

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「でも君たちには信頼できるお父さんやお母さん、そして大使館の職員がいるから、絶対に君たちの命は守ってくれる」

 子どもたちは、下を向いて黙って聞いていました。

「先生、先に帰らないでよ!」

 むしろ、そう言い返してくれた方が、こちらの気は楽になるのかもしれないと思うほど、とてもしんどい沈痛な時間でした。戦争はいつも、大人たちが勝手に始めて、子どもたちや弱い人を巻き込んで不幸にするんです。

 5月中旬、危険情報がレベル2になったのち、テヘランに戻りました。咲き誇るバラを満喫したのも束の間、7月31日にテヘランのゲストハウスに滞在中のイスラム組織ハマスの最高幹部、イスマイル・ハニヤ政治局長がイスラエルによって暗殺されたのです。教員たちは再び帰国せざるをえませんでした。

 あの頃、テヘランで暮らしていて身の危険を感じることは、あまりありませんでした。無差別な爆撃や自爆テロがあるわけではなく、民間人が暮らすエリアにはミサイルが撃たれることもない。しかし、危険情報レベルが2に引き下げられたのは、もう2024年も終わる12月中旬のことでした。

「12日間戦争」下のテヘラン市内(2025年6月13日撮影) Ⓒ時事通信社

 それまでの4カ月間、テヘランにいる子どもたちに、日本からオンラインでの授業をしていました。コロナ禍の経験から、生徒も教員も自宅から参加させる予定でしたが、保護者の方から寄せられた言葉に、ハッとさせられました。

「子どもたちにとっては、学校という空間が大事だから、学校に通わせてほしい」

 コロナ禍では、みんな等しく閉じこもり生活を余儀なくされていましたが、今回は違う。「なんで僕たちだけ学校に行けないの?」。子どもたちは、きっとそんな気持ちを抱いていたのでしょう。

※本記事の全文(7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年6月号に掲載されています(西田隆之「イラン18時間脱出記」)。

全文では、以下の内容が語られています。
・脱出1時間後に空爆
・700万人のアフガン難民
・警備員は今も学校を守る

文藝春秋

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イラン18時間脱出記

出典元

文藝春秋

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