東証プライム上場のユーザーローカルは、ビッグデータ解析や人工知能による情報提供サービスを手がけるIT企業。この会社を創業した伊藤将雄さんが、「わが人生最大の失敗」を語った。

◆◆◆

 僕は就職氷河期が始まって間もない1997年に大学を卒業して、日経BPに入社し、同年に創刊された「日経WindowsNT」というコンピュータ雑誌に配属され、記者・編集者として働いていました。95年にウィンドウズ95が発売され、僕はプログラムを組んだり、自作PCを作るぐらいにはコンピュータに親しんでいたので、これからIT業界が成長するだろう、という予感は漠然と抱いていました。でも、インターネットをやっている人は一部でしたし、EC(電子商取引)に至っては、まだまだ普及するはずがない、というのが常識でした。

ADVERTISEMENT

ユーザーローカル社長の伊藤将雄さん ©文藝春秋

 ところが1999年、僕はその認識を大きく揺るがされる体験をします。その年、僕は会社の同期数人と休暇を取って沖縄旅行に出かけました。那覇で泡盛のお店に入ったら、店主が「実はうち、最近ネット通販をやり始めたんだよ」と言い始めた。都内のお店で流行に敏感な若者が店主だったら、それほど驚かなかったかもしれませんが、その店主はコンピュータとは縁がなさそうな普通の年配のおじさんです。僕はびっくりするあまり、どれぐらい売れているのか、どこから注文があるのかなどを根掘り葉掘り訊いてしまいました。すると、日本全国から注文が入っていて、めちゃめちゃ売れていた。そして、そのお店のネット通販台帳の表紙には、後に楽天となるエム・ディー・エムに入社していた僕の友だちの名前が書かれていました。彼がそのお店に営業をかけて、エム・ディー・エムが作った「楽天市場」に出店をしてもらっていたんです。

楽天グループの三木谷浩史社長 ©文藝春秋

 当時は電子マネーがまだ普及していない、試着や試食ができない、日本ではリアル店舗が行き渡っていて、ネット通販を使う必要がない、といったことが「ECは流行らない」理由として語られていました。しかし、沖縄での体験を経て目が覚めました。

 このときまで「ECは流行らない」という先入観を信じ込んでいたこと。これが僕の失敗です。僕は学生時代に「みんなの就職活動日記」という就活口コミサイトを開発し、軌道に乗せていたので、もっと早く自分の先入観の間違いに気づけていたら、就職活動をやめて、卒業と同時に起業をしていたかもしれません。

三木谷さんからの誘い

 僕は沖縄から東京に戻るやいなや、その友だちに「一度、エム・ディー・エムを見学させてくれ」とお願いして、当時、祐天寺にあった会社を訪ねました。まだ起業されて2年しか経っていなかったので、小さな会社で働いている人も数十人しかいなかった。そこで三木谷浩史さんに会ったら、「これからはECが確実に来るから、こっちの世界に来なよ」と誘われました。そこで半年ぐらい考えて、楽天に入社しました。最初に担当した仕事は、携帯電話で利用できる「楽天市場」を作ること。当時はまだ携帯といえば、ガラケー。通信速度は遅いし、画面も白黒。ネット使用料も高かった。だから、絶対に流行らないと思ったのですが、自分の先入観が崩された沖縄での体験を思い出して、無我夢中で作りました。

※この続きでは、失敗体験からの学びについて伊藤将雄さんが語っています。約1900字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年5月号に掲載されています(伊藤将雄「ECは流行らないという思い込み」)。

文藝春秋

この記事の全文は「文藝春秋PLUS」で購読できます
ECは流行らないという思い込み

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】東京極秘対談 ティール×トッド 世界は終末を迎えているのか/池上彰×佐藤優 “暴れ獅子”トランプと“女豹”高市の生きるか死ぬか/官邸官僚の第二の人生

2026年5月号

2026年4月10日 発売

1300円(税込)

Amazonで購入する 目次を見る