――何か言えたきっかけがあったんでしょうか。

吉田 「アスリートは、いつかは全員終わる。でも、そのいつかが違うだけだよ」って夫に言われたんです。彼は自分が現役を退いた2018年からずっとそう言っていて、26歳とまだ若いタイミングで引退する時もそうでした。

――それが今度は吉田さんの引退の背中を押した?

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吉田 あらためて夫から「みんな終わるんだ。ただタイミングが違うだけだ」と言われて、何か腑に落ちたんですよね。「私の『いつか』が今なんだと思えるんだったら、この選択は間違いじゃない」と決心がつきました。「いつ終わりが来ても後悔しないように」とずっと自分に言い聞かせてきたつもりでしたけど、最後に背中をポンと押してくれたのは間違いなくあの言葉でした。

母親に引退を伝えた時に「見抜かれていたこと」

――引退を伝えたのは河野さんが最初ですか?

吉田 そうですね。次が母親で、2024年の9月の海外遠征に出発する直前でした。当時は父がまだ旭川の病院に入院していて、家がある常呂町からお見舞いに行く途中にあるレストランで伝えました。

――なぜ、その場所だったのでしょう。

 

吉田 北海道の紋別町に「あんどうさん」という、私たちの家族が小さい頃からよく通っていた老舗の洋食レストランがあって、家族の思い出が詰まった場所なんです。そこで小さい頃から好きだった「ハンバーグセット」を食べながら母に伝えました。「ロコ・ソラーレを退団しようと思う。オリンピックを目指すキャリアとして、これを最後にしようと思う」って。

――反応はどのようなものでしたか?

吉田 少しホッとしたような穏やかな笑顔で「いいと思うよ。よく頑張ったと思うよ」って言ってくれました。

――お母さまは吉田さんの決心を察していたんでしょうか。

吉田 後で知ったんですけど、母は私のことを「知那美が私に何か報告してくるときは、相談じゃなくてもう決まってる」と見抜いてたそうです。やっぱり親ですね。私がいろいろ悩んで考えて選んだ結果だということをすぐに分かって、ただ「いいと思うよ」と答えてくれたんだと思います。