「ぶっ殺すぞ」——深夜の路上に響いた野太い怒声が、21歳の未来ある女性を恐怖の底へと突き落とした。
見知らぬ異国の地で男の車に拉致され、光も音も遮断された「トランク」に閉じ込められた空白の15時間。暗闇のドライブの果てに残された、あまりにも異様で不気味な現場の謎とは。
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平成16年(2004年)の初夏、観光客で賑わう山梨県富士河口湖町で、一人の外国人旅行者が夜の闇に消えた。
台湾から団体観光ツアーで日本を訪れていた女子大生・リンさん(当時21歳=仮名)。実の兄とともにテーマパークなどを巡り、日本の風景と文化を楽しむはずだった彼女の運命は、深夜のコンビニエンスストアへ向かったわずかな隙に狂わされる。
午後11時30分頃、暗い夜道を一人で歩いていたリンさんに、一台の車が近づいた。乗っていたのは、ナンパ目的で車を走らせていた無職の男、カワムラショウタ(当時25歳=仮名)である。
突然の「ドライブ行かない?」という誘いをリンさんが拒絶すると、男の態度は突如として豹変した。車の助手席の背もたれを拳で激しく殴打し、「ぶっ殺すぞ」と脅迫。恐怖に包まれる彼女の両足を抱え上げ、無理やり車へと押し込んだのである。
見知らぬ男の車に閉じ込められたリンさん。車内で何度も帰してほしいと懇願するが、男はドアポケットからサバイバルナイフを取り出し、冷たい刃先を突きつけて彼女を黙らせた。
そして男は、リンさんが逃げ出せないようビニールテープで両手足を縛り上げると、あろうことか彼女を車の「トランク」の中へと押し込んだのである。
光も音も完全に遮断された、息の詰まるような狭い空間。トランクに縛られた女性を乗せたまま、男の車は富士山麓から静岡県沼津市方面へと、あてなき迷走を続ける。誰も気づかない車の後方で、リンさんは約15時間にも及ぶ地獄のような監禁状態に置かれ、極限の恐怖と闘いながら次第に衰弱していった。
だが、この事件の異常性は、長時間のトランク監禁だけにとどまらない。
のちに遺体となって発見されたリンさんの姿は、常軌を逸していた。下半身が露出した状態で側溝に投げ出されていた彼女の顔面には、なぜか大量のウイスキーが浴びせかけられていたのだ。さらに、頭部にはビニール袋がすっぽりと被せられ、固く縛り上げられているという、あまりに無惨で不気味な状態だったのである。
なぜ男は、命を奪った被害者の顔にウイスキーをかけ、ビニール袋を被せるという不可解極まりない行動に出たのか?
密室の車内で繰り広げられた15時間の果てに、男を冷酷な殺人鬼へと変貌させた「ある一言」とは一体何だったのか。そして逮捕後、法廷に立った男の口から語られた、遺族を絶望の淵へ突き落とす「身勝手すぎる主張」とは——。
自己保身と欲望が渦巻く戦慄の事件の全貌と、嘘にまみれた供述を崩す法廷での息を呑む攻防は、以下の本編で詳細に解き明かされる。

