サービスの一つとして提供される安楽死
アミール・ファルスードのこの番組は、安楽死制度の本来の目的について、カナダ国内のみならず、世界的に大きな議論を巻き起こした。
カナダ国内では、「十分な福祉や住居を提供できない政府が、解決策として『死』を提示しているのではないか」という批判が高まり、法案ができた当初は末期患者のためだった「安楽死法」が、なし崩し的に「経済的理由」で利用されるまでに拡大している現状に、多くの専門家が警鐘を鳴らしだした。
安楽死を制度として認めているのは、カナダの他に、欧州ではオランダとベルギー、ルクセンブルク、オーストリア、スペインそれにスイス。米国では、ワシントン、オレゴン、カリフォルニアなど10州とワシントンD.C .。その他の地域ではコロンビア、オーストラリア、ニュージーランドだ。
欧州で安楽死法の先陣を切り、カナダと同じように、最初は「末期患者を苦しみから救う」はずだった基準が、その後政府によって徐々にゆるめられているオランダやベルギーでも、アミールのこのニュースはネットを中心に炎上し、多くの批判が飛び交った。
どちらの国でも、すでに安楽死は未成年者や精神疾患患者、認知症患者へ適用され、安楽死をサービスの一つとして提供するクリニックや、関連するビジネスモデルが、着々と確立しつつある。
クラウドファンディングの成功
だがカナダのこの事例をきっかけに、自分を社会的な「お荷物」と感じる高齢者が、死を選ばされる心理的圧力を受けていることが再び問題視されてゆく。
また、番組を見てアミールに同情した視聴者たちがクラウドファンディングを立ち上げたところ、世界中から6万カナダドル(約650万円)以上の寄付が集まり、当面の家賃を確保できたアミールは、すぐに「安楽死制度」の申請を撤回した。
SNS上には、「行き過ぎた安楽死制度がハッピーエンドに転じた好例」「人の善意は最後の砦」「市民の連帯が社会を動かした」「人間性の勝利」といった、肯定的なコメントが、次々に現れては消えてゆく。
だが本当にそうだろうか?