文学史を遊びながら学べるカードゲーム『大文豪』は、神奈川県立茅ケ崎北陵高校3年生(当時)の6人が開発したアイデア商品だ。今年の2月から3月にかけてクラウドファンディングを通じて販売し、用意した400個が完売した。開発チームの顧問を務めた国語教諭の小田隆拓さんが、『大文豪』の誕生秘話を語る。

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文学史の授業への反応が薄すぎる――

 文学史の授業への反応が薄すぎる――。昨年10月、国語教員である私が、そんな悩みを当時勤務していた茅ケ崎北陵高校の3年生に打ち明けたのが、開発のきっかけでした。

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「カードゲームにしたらいいのでは」とのアイデアは生徒から生まれ、いつの間にか文学史を学べるカードゲーム『大文豪』の開発チームが結成されました。推薦入試などで早めに進路が決まった生徒たちが遊びの中で制作を始めたのです。

カードゲーム『大文豪』は、神奈川県立茅ケ崎北陵高校の3年生(当時)が開発。遊びながら「文学史」を学べる趣向だ ©文藝春秋

 使用するカードには、入試頻出の72作品が、それぞれ一作ずつ印刷されています。作品名のほか、作者、発表年、似顔絵、一言紹介、引用文なども掲載されています。

 遊び方は、トランプの「大富豪」に似ています。時計回りで手札を場に出し、手札がなくなった順に勝者が決まる。手札を出す基準は作品の発表年。山札に「より古く」「より新しく」といった指示が書かれており、その指示に合う発表年の作品のカードを出していきます。

カードゲーム『大文豪』を開発した神奈川県立茅ケ崎北陵高校3年生(当時)の6人(提供:小田隆拓)

「より古く」の指示が出ているなら、1935年発表の「雪国」が出された後に、36年発表の「風立ちぬ」は出せません。発表年を意識することで遊びながら文学史の流れを掴める仕組みです。

 ちなみに、カードを出すときは「蒲団(ふとん)・田山花袋(たやまかたい)」「阿部一族(あべいちぞく)・森鴎外(もりおうがい)」「多情仏心(たじょうぶっしん)・里見弴(さとみとん)」と、作品名と作者名を読み上げなくてはならず、作者名にはフリガナはありません。音読することで記憶の定着を狙っているのです。

『大文豪』が完成するまでには、試作が何度も繰り返された(提供:小田隆拓)

 高校生らしい視点のルールも盛り込まれています。インスタグラムなどSNSで多用される「タグ」システムです。

 カードは「言文一致」「私小説」「新感覚派」など主義や流派でタグ付けされていて、場に同じタグのカードがあったら、早い者勝ちでカードを捨てられる。こうしたリアルタイム性からゲームに緊張感が生まれるだけでなく、作品や作家を主義や流派で覚えることができます。

 制作過程で面白かったのは生徒の役割分担が進路に沿っていたことです。文学部に進む生徒が作品選定や掲載内容の編集を手がけ、ルールと説明書の作成は法学部、発注先の選定や収支管理は経営学部、カードデザインは美大、といった具合です。私は顧問としてチームを見守るだけでした。

カードゲーム開発の顧問を務めた国語教諭・小田隆拓さん Ⓒ文藝春秋

 当初は販売を想定せずに開発を進めていた生徒たちですが、試行錯誤を重ねるにつれて野心が湧いたようです。年の瀬のある日、「せっかくだから販売したいね。クラウドファンディングとかやっちゃう?」と盛り上がっているのを耳にして、私は胸躍りました。無茶をしない大人びた生徒たちに、チャレンジ精神が開花する兆しを感じたからです。

※カードゲームの開発と販売は、どのような教育効果を生徒にもたらしたのか。この続きで教諭が分析しています。全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年7月号に掲載されています(小田隆拓「カードゲーム『大文豪』ができるまで」)。

文藝春秋

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カードゲーム『大文豪』ができるまで

出典元

文藝春秋

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