「コンドウさんのところにお金を取りに行こうと思う。押し込みみたいな形なんだけど」——。
白血病で闘病する妹へのリンパ球提供を目前に控えた男性に襲い掛かった、身勝手極まりない男たち。彼らは、被害者を自宅のソファに縛り付けたまま、奪ったキャッシュカードの金でギャンブルに狂うというあまりにも常軌を逸した犯行に及んだ(※文中の登場人物はすべて仮名)。
借金帳消しを狙う身勝手なシナリオ
平成18年(2006年)の春、千葉県松戸市。住宅リフォーム業を営むハシヅメシュン(当時42歳)の資金繰りは、彼自身のバカラ賭博などの浪費によって完全に破綻していた。
知人のコンドウミナトさん(当時47歳)から、借りた550万円の返済を早めるよう求められたハシヅメの脳裏に、「彼を殺害して借金を帳消しにし、金品も奪おう」という凶悪な思考が浮かび上がる。ハシヅメは自社の部下であるナカニシユウ(当時59歳)を誘い、犯行の準備を進めた。
4月17日の夜、2人はコンドウさんの自宅へと侵入する。しかし、ハシヅメは“強盗”を犯すのではなく、強盗に入られたと偽装する“狂言強盗への協力”を持ちかけた。
当然、コンドウさんはこれを拒絶する。彼には、白血病で闘病中の妹を救うため、自らがドナーとなってリンパ球を提供する日が目前に迫っていたのだ。妹の命を預かる大切な身体で、犯罪の片棒を担ぐような理不尽な要求を呑めるはずもないことは想像に易い。
縛られた被害者、カジノへ向かう男
交渉が通じないと見るや、ハシヅメたちは本性を現す。隠し持っていた包丁を突きつけてコンドウさんを脅迫し、ロープとガムテープで縛り上げ、猿ぐつわを噛ませた。
さらに応接間の1人用ソファの肘掛けに包丁を激しく叩きつけて脅迫し、暗証番号を吐かせる。ここから、ハシヅメの行動は完全な異常性を帯びていく。
暗証番号を聞き出したハシヅメは、単身で埼玉県の違法カジノクラブへと直行した。そして奪ったキャッシュカードを従業員に渡して現金を引き出させ、彼はバカラに興じ始めたのである。
その間、自宅に残されたコンドウさんは、逃亡を防ぐためにナカニシの手によって体をソファごとガムテープで二重、三重に巻き付けられ、完全に身動きが取れない状態で放置されていた。
翌18日の深夜0時を過ぎた頃、ギャンブルを終えたハシヅメがコンドウさんの自宅へと戻ってくる。そして2人は、緊縛されたままのコンドウさんを車の後部座席に押し込み、深夜の暗闇に包まれた利根川の河川敷へと車を走らせた——。
「外の空気を吸おう」。そう言って車外に連れ出されたコンドウさんを待っていたのは、残酷な結末だった。

