施設の職員から「半年は会いに来ないでください」と言われた理由
――それはどうしてですか?
カマたく 家族がちょこちょこ顔を出してしまうと、本人が寂しくなってしまって、いつまでも新しい環境に慣れることができないそうです。
「半年は会いに来ないでください」と言われたし、私たちもかなり疲弊していたので、半年くらい本当に会いに行かなかったんですよね。だからこそ、祖母の様子がわかる写真を送ってくれるのはすごく助かりました。
あとは、その施設は「万が一の場合に延命措置はしません」という方針だったんですけど、私たちとしても、もう平均寿命をとっくに過ぎている祖母に延命措置はしない方向性で決めていたので、そこも合っていたんですね。
――「延命措置をしない」と決めていたのはどうしてでしょうか。
カマたく 一番大きいのは、昔から本人の希望がそうであったことですね。私たちとしても「90歳も超えていて、寝たきりで管を繋いでずっと生かされるのもどうだろう」と思っていたので、何かあった時の覚悟はもうしているという感じです。
「ひとりぼっちで死んでいったからねぇ……」久しぶりに会いに行った時の祖母の“驚きの反応”
――入所から半年が経過したあと、おばあさまに会いに行かれたのですか。
カマたく 行きましたね。久しぶりに会いに行ったら、私の顔を見てポカンとしていたので「久しぶり~、会いにきたよ」と声をかけたら、やっぱり「アンタ、誰だっけ?」と言われました。でももう悲しくもないですよ。さっきも言った通り、私の心の中では祖母はもう死んでいるので。
「タクヤ(カマたくさんの本名)だよ」というと「ああ~!」と言ってくれたので、「思い出してくれたんだ」と喜んでいたんですけど、そのあとに「タクヤのことかい……あの子は何をしても報われなくてね……ずっとひとりぼっちで死んでいったからねぇ……」と言われて。死んだことにされてました。
私、心の中で祖母を殺していたけど、祖母も心の中で私を殺していた。お互いさまですね(笑)。
――それ以降も、カマたくさんに対して同じような反応だったのでしょうか。
カマたく 施設に入所して2年くらい経った頃に一度、思い出してくれたことがあったんです。ずっと死んだことにされていたので、祖母の部屋に入るやいなや「お盆だからあの世から会いにきたよ~」とでも言ってみようかなと思っていたんですけど。
でもその日、私の顔を見た祖母が「ああ~、タクヤか」と目を細めたんですよ。もう、不覚にも泣きました。
忘れられちゃった時は「ああ、忘れられたか~」ぐらいにしか思わなかったし、死んだことにされた時も寂しくなかったんですけど、やっぱり顔を見て名前を呼んでくれるって嬉しいんだなって。
撮影=杉山秀樹/文藝春秋
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