43歳の男は、公私ともに出口のない閉塞感に苛まれていた。妻と経営するガールズバーは500万円の追加融資を受けても好転せず、10年以上続く不妊治療の重圧が夫婦を追い詰めていた。
生理のたびに泣き崩れる妻との性交渉は厳しく制限され、会話も「店」と「子」の話題のみ。男の心には「もう一度、めくるめく性行為をしたい」という歪んだ欲望だけが膨らんでいった。
巧妙化する狂気
男はマンガから強姦の手口を学び、周到かつ異常な犯行を重ねた。あるエステティシャンの女性を襲った際は、事前に尾行して部屋の犬の存在を把握。ペットショップで購入した犬用ガムを事前に持参し、犬を黙らせて侵入するほどの緻密さを見せた。
さらに、19歳のキャバクラ嬢を襲撃中に母親が訪問するという事態にも、男は動じなかった。「店の客だ」と玄関で対応して母親を追い返し、平然と犯行を継続するという大胆不敵さを発揮した。男が襲った女性はわかっているだけでも9人以上に及んだ。
残された最後の謎
悪行は、深夜のコンビニに長時間停車していた男の愛車「エルグランド」から露呈した。複数の現場で目撃されていたこの車を警察はすでにマークしており、行動確認を察知した男は逃亡。硫化水素での自殺を試みるも、直前で身柄を確保された。
DNA鑑定により犯行が次々と立証され、長期服役が確定的な状況で、男は取調官に不可解な告白をした。
「刑事さん、オレ、売春組織に囲われている女性を襲ったことがあるんです」
「あれはいまだに分からない。ずっと気になっていたんです。立件されても構わない。真実が知りたい」
捜査機関も把握していなかった未発覚の事件とは、いったい何だったのか。
