経営者やテレビタレントの名前が

「もともとは『お座敷にはどんな業界人・大物がお客様として来るのか?』というテーマを1話分で描く予定でした。しかし、桐貴さんが当時のお話を始めると、誰もが知る大企業の経営者やテレビタレントなど、次々と実名が挙がり、宮本さんと私は恐ろしすぎて乾いた笑いが止まりませんでした」

 一方で、桐貴さん本人は当時、置屋で携帯電話の使用を禁じられ、テレビもほとんど見ていなかったため、世間の著名人をあまり知らなかったという。そのギャップも印象的だったとMさんは振り返る。このエピソードはあまりに内容が濃く、2話分に分けて描かれることになった。

「そのまま食べても問題ないんですよね!」

 また、取材の休憩中には、こんな一幕もあったという。

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「宮本さんがおにぎりを買ってきてくださったことがありました。その際桐貴さんに、『舞妓さんは食べ物をかぶりつくことはNGで、手でちぎって食べる』という作法があることを教えていただきました。その日も桐貴さんは自然とおにぎりをちぎって食べられていましたが、『今はもう、そのまま食べても問題ないんですよね!』と晴れやかな笑顔で話された姿が、とても印象に残っています」

 どんな経験も、時にはユーモアを交えて明るく話す桐貴さん。それは、聞き手が重く受け止めすぎないようにという彼女なりの気遣いだったのかもしれない、とMさんは言う。

桐貴清羽さん(2025年2月、「週刊文春」の取材時) ©細田忠/文藝春秋

特に思い出深いシーンは…

 数々の壮絶な体験が描かれる本作だが、Mさんが特に思い出深いと語るのは、2巻第10話のシーンだ。精神的に追い詰められた主人公・竹駒が置屋から逃げ出すも連れ戻され、置屋の人たちから問い詰められる場面である。

「この場面で竹駒に浴びせられる罵詈雑言は、桐貴さんが置屋へ連れ戻され、尋問を受けた際に実際に言われた言葉たちです」