「親日・反日」を超えて…

 かつて、敗戦とともに日本人が引き揚げたことで、台湾で亡くなった日本人死者たちの世話をする人はいなくなってしまった。それから数十年が経ち、1987年に戒厳令が解除され、民主化が進んだ台湾では、公に扱えなかった日本人の霊が祀れるようになり、各地の日本神が活況を呈し始めたという。

 日本神をめぐる日本と台湾の交流は、台湾人の「祀られざる魂に対峙する」という感性と、日本人の「英霊を祀ってくれている」という理解のズレとともに推移してきた。しかし、この現象に東アジアの共通点が浮かび上がってくると遠藤氏は見立てる。

「この取材の記録を、ソウルで行われた『韓国国際民族誌映画祭2025』で映像作品として上映したときのことです。『植民地時代の日本人が神様になっているなんて、絶対韓国人に怒られる』と戦々恐々としていたのですが、反応は真逆でした。目から鱗という反応で、みんな感心していたのです。

ADVERTISEMENT

 祖先の霊の安寧を重んじる韓国人にとっては、『祀られざる死者の霊が社会に不安をもたらす』という観念が強くあるため、台湾で起きている現象に深く共感してくれました。

 日本の軍人が神様になっている――立場によっては眉をひそめたくなるような現象が、実は東アジアに共通する感性に基づいていたという発見です。『親日』や『反日』という短絡的な二分法がいかに物事を見えなくさせているかという反省を促してくれます」

 遠藤協氏の6年にわたる記録は、ドキュメンタリー映画『軍服を着た神様』として8月1日よりポレポレ東中野ほか全国にて順次公開される。

©2025 SANSARO FILM LLC

INFORMATION

軍服を着た神様
監督:遠藤 協(『廻り神楽』) 旅人: 藤野 陽平(文化人類学者)
語り:中西 レモン 
作曲・アニメーション:武 徹太郎 演奏:馬喰町バンド 整音:黄 永昌
アドバイザー:三尾 裕子・陳 梅卿 プロデューサー:藤野 陽平・遠藤 協 
製作・配給:三叉路フィルム
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
日本|2025|107分|台湾華語・台湾語・日本語

次のページ 写真ページはこちら