・読書ソン・ミンス、アイドルセラー、空港本
ウェブトゥーン『チーズ・イン・ザ・トラップ』に登場する、主人公のファッションや行動をすべてマネするキャラクター「ソン・ミンス」から取って、好きなアイドルが愛用するアイテムや行動をマネることを韓国のネットスラングでは「ソン・ミンスする」と言うが、これを読書に適用したのが「読書ソン・ミンス」だ。
また、「アイドル」と「ベストセラー」を組み合わせた「アイドルセラー」や、アイドルの「空港ファッション」になぞらえ、空港でアイドルが手に持っている本が話題になる「空港本」現象もある。
たとえば人気アイドルグループIVEのチャン・ウォニョンが『四十に読むショーペンハウアー』を紹介すると主要書店で爆発的な売り上げを記録し、哲学書としては異例のベストセラーとなった。
・チェクプルリ(本+プレイリスト)、読書用プレイリスト、聴音化
「本を読むときに聴く音楽」「『人間失格』を読むときに浸たれるプレイリスト」といった、特定の書籍のムードに合わせた音楽プレイリスト動画が高い再生数を記録している。オーディオブックとはまたちがう意味での「聴く読書」といえるかもしれない。
出版社「チャンビ(創批)」は、詩集の雰囲気に合う音楽をキュレーションして聴かせるブースを運営してもいる。
参加・体験型のエンタメへと進化する読書
BookTokやBooktuberの影響力も増しているが、それらの動画サービスではインフルエンサーが視聴者の情動に訴えかけるようなものがどちらかといえば目立つ一方で、テキストヒップはデジタルな刺激への対極さを志向する傾向にあり、騒がしくなく静的なものをさすといわれる。
ただソウル国際ブックフェアでは出版社のブースに長蛇の列をつくり、限定版書籍やグッズを求めて開店ダッシュする若者が続出し、2024年10月にハン・ガンがノーベル文学賞を受賞するとすぐに主要書店に限定版や在庫を求めて開店前から行列をつくる「オープンラン」現象が20代から中高年まで起こった。これらはファンダム文化のアグレッシブな消費のしかたが文学などにも流入したものだと語られている。
このように、かなり雑多な内容をひとくくりにして「テキストヒップ」と呼よ んでいる。いずれにしても、読書を参加・体験のほうに大きく拡張する動きであり、やはりポストクリティーク的な流行である。
ポストクリティークとは、従来の批評が重視してきた批判的な読解だけでなく、沼落ち、ハマる、感動といった経験も正当な読解として評価しようとする立場である。「泣ける」「エモい」「めっちゃわかる」といった感情や、それを他者と共有することを幼稚な態度として否定するのではなく、作品との重要な関係性として捉える。