「まあ、ヤンチャそうに見える奴ですけど」
40代になった近年も現役として檜舞台に上がることを願っていたが、まさかあの圧倒的な肉体を持ち、明るく快活で前向きだったKIDが早世してしまうとは……。今回の悲報にあたり、以前、郁榮氏の語っていた言葉を思い出す。
「まあ、ヤンチャそうに見える奴ですけど、自分から絶対にケンカをすることはないし、家族や仲間のためには体を張って前に立つ男です。親分肌みたいなところがあって、無茶なことは絶対にしない。まあ、こんなこと言っていると親バカだと思われてしまうかもしれませんが(笑)」
「絵と格闘技って似ていると思うんですよ」
そういえば数年前、KIDと会ったとき顔がヒゲで覆われていた。イメチェンでもしたのか理由を聞くと意外な答えが返ってきた。
「最初はたまたま伸ばしていたんですけど、子どもを抱っこしていると面白がってヒゲを引っ張るんですよ。まあ痛いんですけど、剃っちゃうと引っ張れなくなっちゃうから伸ばしてるんスよ」
笑顔で語るKIDもまた親バカだった。
昨今は好きな絵を描くなど仲間とアート活動をすることもあった。地方に行って子どもたちと一緒に創作をした際には、次のようなことを目を輝かせ語ってくれた。
「一緒に絵を描くとわかるんですけど、子どもたちの頭の中ってハンパないんですよ。イマジネーションが凄い。で、飽きて遊びだしちゃうんだけど、山の中とかガンガン走り回っちゃうんですよ。いやー、刺激受けますよね。絵と格闘技って似ていると思うんですよ。俺は格闘技をやるとき頭の中で描いたことを表現するんですけど、それは絵も一緒。だから好きなんですよね」
能動的であり明暗の分かれるシビアな格闘技と、絵画をさらっと同一のものとして語れてしまうKID。獰猛な肉体を持つアーティストは、やはり不世出の人間だったと改めて思わざるを得ない。