空中に約30メートルも突き出した美術館、一本の幹だけに支えられた空中の茶室――。「そんな建て方、ありえるの!?」と驚かずにはいられない建築が、日本には存在する。
日本全国の名建築の「もっとも美しく見える瞬間」を撮り続けた写真家・高橋福生の著書『感動建築』(大洋図書)より、重力への常識を覆す「宙に浮いた建築」を3つ紹介する。
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まるで森の上に浮かぶ回廊『ホキ美術館』
千葉県千葉市にある写実絵画専門の『ホキ美術館』は、見る者を驚かせる建築だ。緩やかに湾曲する細長いチューブ状の展示室が幾層にも重なり、その一部が空中へ大きく突き出している。なかでも、約30メートルにおよぶキャンチレバー(片持ち梁)の展示空間は圧巻で、まるで森の上に浮かぶ回廊のような、スリリングな緊張感を生み出している。内部では、作品を自然に鑑賞できるよう、視線の高さや壁面の連続性、スリット窓から入る光まで緻密に調整されている。日建設計が高度な建築技術によって実現した、重力に抗う「非日常の構造美」である。
手仕事の痕跡をあえて残した『空飛ぶ泥舟』と『高過庵』
一方、長野県にある『空飛ぶ泥舟』と『高過庵』は、藤森照信の縄文的な感性と遊び心が爆発したような建築だ。泥壁の小部屋が宙に浮かぶ空飛ぶ泥舟と、二本の木の上に載り、梯子を上って入る高過庵。どちらも、茶室という日本建築の伝統を受け継ぎながら、その常識を軽々と飛び越えている。土や木といった素朴な素材を用い、手仕事の痕跡をあえて残した姿は、童話に登場する秘密基地のようでもある。建築を眺めるだけでなく、近づき、見上げ、梯子を上るという身体的な体験が、子どものころの好奇心を呼び覚ます。


