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失恋したゲイの僕が、それでも「モー娘。」を応援する理由

類稀なる爆発性と、オトコ受けから距離のある歌詞

2018/09/29

“選ばれた人間”より、“意志のある人間”を集めるモーニング娘。

 思えばこれまでアイドルにハマったことはなかったのだが、それは「選ばれた女」が“オトコ”のために“オンナ”をやっていると感じていたからだ。僕の中の“オンナ”は幼い頃から「オカマっぽい」といじられる種で、誰かに評価されたり選ばれることなんてなかった。

 1次審査どころか、書類審査にさえ出せなかった僕の中の“オンナ”。彼女がアイドルに自己投影できるわけなんてなかったし、楽しんで消費できるわけもなかった。僕にとってアイドルは、極めて関係のない世界の住人だったのだ。

 だけど僕の目に写る『モーニング娘。’18』は「選ばれたかどうか」なんて微塵も気にしていない顔をしていて、そして何より、“オトコ”のためでも、誰のためでもなく、自分のために、“オンナ”を叫んでいるように見えた。

2000年ミュージカル「LOVEセンチュリー」制作発表会見 ©時事通信社

 つんく♂さんはモーニング娘。の人選について、「努力で自分を変えようという強い意志がある子を選んでいる」と語っている。それは元をたどれば一期生からそうだ。オーディション番組で落選し、「選ばれなかった5人(中澤裕子、石黒彩、飯田圭織、安倍なつみ、福田明日香)」が「CDを5万枚手売りで売る」ことを条件にメジャーデビューしたグループがモーニング娘。なのだ。「選ばれたかどうか」じゃなくて、彼女らは自らの道を「選ぶ」ことで進んできた。

 グループ名に「18」という、年ごとに進化を遂げて行くという意思が付された今も、「アイドルになるために生まれた」と一目で分かるような存在の集まりではなく、どこか「光るもの」を持ち、そして努力でその原石を磨き続けられる子たちが集っている。

まだカクカクだった頃の飯窪春菜さんが見られる

 

 例えば先日卒業を発表した飯窪春菜ちゃん(動画内茶色)なんて長年ダンスがカクカクだったが、先の『Are you happy?』しかり、ずいぶんと踊れるようになって、自分らしい魅せ方を身につけてきた。飯窪さんは加入後、今が間違いなくパフォーマンスもルックスも一番完成度が高く、卒業するのは惜しいが、ストイックに向上し続ける姿勢はどこに行っても彼女を輝かせるのだろう(涙)。

もはや“オトコ”を蹴散らす、爆発的な歌詞

 そしてモーニング娘。の“オトコのため”感のなさは、歌詞を見ればまず一目瞭然である。

 例えば先の楽曲『Are you happy?』の中では、歌の背後でずっとメンバーの誰かが何かを叫んでいて、よく聞いてみて欲しい、叫んでいるのは「ローンリネーーーーーーーース!!!!」だ。

「いや、大丈夫か?」と聞きたくなるが、このオトコ受けとの距離ある叫びに僕は気持ちを持っていかれるのである。

 それ以外にも現在の「EDM期」と呼ばれるモーニング娘。となり、初のオリコン1位を獲得した「Help me!!」(作詞:つんく 作曲:つんく)。この曲も歌詞を読んで欲しい。

助けてお願い
か弱い私は
涙も出そうにない
(Ha)
(Ha)
(Ha)
本音が言えない
本音が言えない
​言えナイチンゲール

「言えナイチンゲール」なんて言われたらもう、こちとらお手上げなわけだが、この歌は最後、以下の歌詞で終わる。

キラキラしてる女の子
私は羽ばたくよ
グズグズしてる男の子
後悔しないでね

ピンチから
掴みとる
栄光

 どういうことや……。

 つんく♂さんはこの曲について「都会の中の孤独感とすぐそばにあるポジティブ力」をテーマにしたと語っているが、「言えナイチンゲール」は、ボケてしまうほどに余裕のあるポジティブ力の表れだったのか、それとも寂しさ煮詰まってハイになっちゃうほどの孤独感を表しているのか、はたまたそのどちらともなのか、とにかくこのカオスに “オンナ”の開放というか、“オトコ”の目を蹴散らすほどの爆発を感じるのである。