最新作でイタリア語やスペイン語にも挑戦

 ちなみに、香港の映画ファンによると、彼の広東語は完璧というわけではないようだ。だが、その発音や独特のアクセント・リズムが、逆に彼ならではの魅力として愛されている。

 映画『風林火山』では、広東語に加えてイタリア語やスペイン語の長い台詞にも挑んでいる。香港の配給会社が公開したインタビュー動画の本人の発言から、彼が語学センスに長けた天才ではなく、泥臭いほどのこだわりで役に挑む“努力の人”であることがわかる。

「イタリア語は一字ずつネットで意味を調べて暗記した。先生に聞く前にまず自力で言葉を理解し覚えるというプロセスを大切にしたかった」

「イタリア語のシーンを撮り終えるまで、他の台本は一切見ませんでした。必死に覚えたセリフを忘れてしまいそうで怖かったし、脳の全容量をその役の言語だけに捧げたかった」

映画『風林火山』についてインタビューに応じる金城武(映画配給会社「壹叁喜喜電影 13cc」のYouTubeより)

ハリウッド映画に出演しない理由は…

 彼の評価はアジア圏にとどまらない。米メディアが実施する「世界で最もハンサムな男性100人」ランキングにも何度も選ばれ、中国語圏の俳優として最高位にもランクインしている。世界の脚光を浴びながらも当の本人はいたって冷静だ。

ADVERTISEMENT

 2006年のCNNのインタビューで「ハリウッド映画への出演に興味はないのか」と問われ、流暢な英語でこう答えている。

「ハリウッド映画でのアジア系俳優の役柄には、まだ偏りや限界を感じます。無理にハリウッド進出に飛びつくより、一人の映画ファンとして客観的に作品を楽しみたいです」

 この言葉から20年が経った今も、彼はハリウッド映画には出ていない。時代の流行に流されず、自らの軸を貫き続ける姿勢が、国境を超えて彼が特別な存在であり続ける理由なのだろう。

2. 素顔のギャップ

 香港には、家に引きこもってゲームなどに没頭する男性を指す「宅男(引きこもりオタク)」という表現がある。アジアを魅了するスターでありながら、休日は外に出ずオンラインゲームに明け暮れる金城武は、香港で「神級宅男(超一流の宅男)」と親しみを込めて呼ばれることもある。