ただ近年、物流技術が発展したことでてんぷらの素材も以前と比べてはるかに新鮮なまま提供できるようになりました。その素材を活かすには油の主張は少ないほうがいい。関東の老舗のひとつである新宿のつな八ではごま油のブレンドのベースは香り移りの少ない太白ごま油を使っています。
トリドールの場合、いろいろと試したうえで白絞油が一番、素材の味がひきたつという結論に達したようです。
「衣の厚さ」も「具材の大きさ」も違う
さてチェーンの間の違いの理由は、衣の厚さについても同じです。
丸亀製麺のてんぷらはうどんのつゆに浸して食べるので分厚いほうがおいしく食べられる。しかし天ぷら定食のてんぷらは薄くてからりとした方がおいしいというのです。
どちらの業態もてんぷらを人が手で揚げるというライブ感は同じです。ただし、提供されるスタイルはそれぞれに違いがあります。丸亀製麺は棚に並べられたてんぷらを顧客が選ぶ形。天ぷら定食まきのでは揚げたてがそのまま提供される形です。このような前提の違いも衣の厚さに関係するようです。
実は調理法についてもうひとつ違いがあって、具材の大きさが違います。天ぷら定食まきのの具材は総じて丸亀製麺よりも大きいのです。念のため他店にも食べ比べに行きましたが、てんややえびのやといった競合のてんぷら定食よりも大きいと思いました。
基本の天ぷら定食は全部で6品。それでお腹がいっぱいになって満足する量に設定しているのだそうです。実際、一度では食べられない大きさのため、最初の半分は藻塩を振りかけて、残り半分は天つゆでと味変を楽しむことができました。
ここまでの話をすると、
「顧客体験が違うのだから、てんぷらのレシピを変えるのは当たり前だ」
と感じる読者の方が多いかもしれません。
しかしなぜシナジーのない形で別業態に打ってでるのでしょうか?
大手飲食チェーンのセオリーは真逆
大企業の経営セオリーは一般に逆です。
たとえばすき家のゼンショーがロッテリアを買収したときの発想は「うちの牛肉の仕入れ力を活用することで優位が築ける」というものでした。中国料理の業態が2種類ある大手チェーンでも通常は炒飯や焼売は同じ仕入れ先から仕入れます。そういった動きと比べると天ぷら定食まきのだけでなくコナズ珈琲もずんどう屋も、トリドールはずいぶん飛び地を狙っているように思えます。