購入を済ませると、店内の別階にある免税手続きコーナーで消費税分の還付を受ける。購入者とは別人が還付手続きをする例もあった。ある客は百貨店の外に止めていたワンボックスカーに大量の化粧品を積み込み、走り去った。調査官らは、転売目的が疑われるこうした客を追跡し、転売先を割り出そうと試みたこともあったが、結果的に割り出し作業はうまくいかなかったという。

 近鉄百貨店の税務調査を担当する調査第二部の調査官らも購入記録などを調べ上げ、中国人などの同一人物が連日、49万円分の化粧品購入を繰り返したり、同じ日に近鉄百貨店の複数の店舗でそれぞれ49万円分の買い物をしたりするなど、不自然な購入実態をつかんだ。こうしたことから、国税局は転売目的の疑いが強いと判断した。

化粧品を買う中国人観光客 ©時事通信社

 また、2024年6月には、ドラッグストア「ダイコクドラッグ」をチェーン展開する大阪市の運営会社2社が、大阪国税局の税務調査を受け、2021年8月期までの2年間に過少申告加算税を含めて消費税計約3億円を追徴課税されたことが発覚した。転売目的など免税要件を満たさない外国人客への販売は約30億円分あったとされる。

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売り上げを伸ばしたい店側

 近鉄百貨店、ダイコクドラッグのケースとも、転売業者が日本での滞在期間が短い中国人らをSNSでアルバイトとして募集し、日当を払って化粧品などを大量購入させていたとみられている。免税販売した店側は「パスポートの確認など、免税販売の手続きは適正に行っていた」と主張しているが、結果的に転売業者らの不正を助長することになった責任は免れないだろう。

 租税政策に詳しい森信茂樹・東京財団政策研究所研究主幹(当時)は、朝日新聞の取材に「利便性を高めるために店頭での免税販売を認めてきたが、売り上げを伸ばしたい店側もチェックが甘くなりがちで、転売は防ぎにくい」とコメントした。

 しかし、最も悪質なのは、不正を行っていた転売業者や、「買い子」役の中国人ら購入者であることは間違いない。それでも、国税当局が彼らの責任を追及することは簡単ではないようだ。

※この続きでは、「買い子」の責任追及が難しい理由を解説しています。約7800文字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年9月号に掲載されています(「iPhone、近鉄百貨店…消費税不正を追え」)。

■市田隆(いちだ・たかし) 1964年生まれ。1988年読売新聞社入社。2003年朝日新聞社入社。司法記者クラブキャップや、調査報道担当編集委員を歴任。共著に『原発利権を追う』など

文藝春秋

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iPhone、近鉄百貨店…消費税不正を追え

出典元

文藝春秋

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