「みんな悪くない」では何も残らない
――私はハードな現実に迫るノンフィクションが好きなんですが、そういうものを好んで読むのはいやな趣味なのかと思っていた時期がありました。でも、「過酷な状況に置かれた人間がどうやってその状況を打破しようとするのか」を読みたいんだと気づいたんです。鳥さんの作品もその路線にあると思います。
鳥 そうですね。自分はソリューションのある読み物が好きでして。自己啓発本の類も読みますし。とにかく解決法が書いてある本が好きなんです。
解決できないことばかりの世の中で、「我慢してみんなで仲よく生きてこう」「みんな悪くない」とマイルドに言っていても何も残らないと思います。解決しようとすると強い言葉を使わざるを得ないこともある。もちろん差別的になったりしないよう、言ってはいけないことを避けながら言葉を選びはしますが。
「正しさ」は時代によって変わるから、間違ったことを言うかもしれないけど、そう思ったら次の本で「間違っていました」と言うしかありません。恐れずに、その瞬間に正しいと思ったことを書いていかないと。
――『漫画でイけ』に収録された2作はいずれも、「解決した」結末ではないと思います。でも、「理解」と「解釈」が書かれていて、だから「こういうふうに生きていくんだ」という希望的なラストを迎えているのではないでしょうか。
鳥 物語的に解決するのって難しいことではないんです。最後に神が出てくるとか、物語として丸くおさめることは可能なんですけどね。
でも、本来、自分は自分の人生から出ていけない。どんなに認知が歪んでいたとしてもその人の中で整合性がとれていればいいと思います。でも、実際は整合性をとることさえ大変で……それを書いているつもりはあります。「ざまぁ系」にならない理由は、いやな人もヤバい人も、その人らしく尊厳を持って生きていってほしいからなんですよ。
転売するときに価値のある本に
――作家としての目標はありますか?
鳥 作品が長く残ってほしいと思います。長く残るようにがんばる。100年後とかに読んでもらうことを目標にすると、ブレないかなと。あとから読んだときになんと思われるかは想像しようがないですが。
たとえば今、50年くらい前の小説を読むとあまりに常識が違って「なんだこれ」と思うことがありますよね。そういう感情になる人もいると思う。でも、書いておくことに意義があると思います。後世に残るためには、ある程度売れることも必要ですが。
「100万部売れるマンガを描く」とかって、自分にとっては目標にするべきではないと思うんですよね。小説はもっとハードルが高いはず。じゃあ、作品の価値を上げるにはどうするかというと……好いてくれる人にきれいに保存してもらって、将来転売されるときに価値が出るみたいな(笑)。
