2021年に漫画家デビューした鳥トマトさん。特徴的でポップな絵柄と、「リアルすぎる」と評される生々しい人物描写でSNSを中心に注目を集めてきた。この8月、初の小説単行本『漫画でイけ』(文藝春秋)を上梓。小説の中にマンガが組み込まれるという斬新な構成で、漫画界に生きる人々の葛藤をリアルに描いた。

「漫画家を描いたマンガはもうたくさんある。でも、漫画家のことを小説にしている人はあまりいなさそうで」——そう語る鳥さんに、話を聞いた。(全3回の1回目)

1992年生まれ、福岡県出身の鳥トマトさん ©末永裕樹/文藝春秋

◆◆◆

ADVERTISEMENT

――鳥トマトさんのかぶりもの、実物も素敵です。

鳥トマトさん(以下、鳥) ありがとうございます。「かものはしの造形おもちゃ」という、リアルな動物のかぶりものを作っている工房があるのですが、もともとそこの作品が好きで。実在しない動物でも作れるということだったので、オリジナルイラストをもとに作ってもらいました。

――ぺンネームの由来も教えていただけますか?

 学生時代にみんなからトマトと呼ばれていたんです。

 もとはといえば小学生時代、塾の合宿に参加したとき……毎日、その日のテストの成績が貼り出されていたんです。本名がバレると、順位がバレる。それがいやで、「トマトって呼んでください」って言い始めたんです。その時の食事にトマトが出ていたので。そのあだ名がずっと続いて、大学でも「トマト」で通っていましたね。

――「鳥」はどこから?

 鳥になりたかったので。「鳥さん」と呼んでいただけるの、うれしいです。

 

話題の漫画家が書いた「初小説」

――鳥さんが小説の単行本を出されると知って、とても楽しみにしておりました。「漫画でイけ」、そして「僕の血」と、収録された2作とも若手の漫画家が格闘するストーリーですね。

 自分は2021年に漫画家デビューしたんですが、もう新人の域は抜けてしまったことに気づいて。新人のときの気持ちなどを今のうちに書いておかないと忘れるなと思ったんです。

 辛かった気持ちとか、これまで出会ったヤバい編集さんとか、編集者に限らずヤバい人たちのこととか、一回書いておいたほうがいいんじゃないかと思って。こんなおもしろすぎること、自分の中だけにしまっておくのはもったいないと思いました。

――SNSで大きな話題を呼んだ、『東京最低最悪最高!』*(小学館)という出版業界を描いたマンガ作品もあります。今回、マンガではなく小説で描いたのはなぜだったのでしょう。
*「東京とかいう最悪の街に住み続けるために結婚する、最低な女の話です」という文章とともに、鳥トマトさんのXで第1話が紹介されると大きな話題(現在1473万インプレッション)となった。