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「野球、わかんねーわ」 西武優勝のキーマン・松井稼頭央、考え続けた野球人生

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/10/03
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稼頭央さんに花道を!

 実は、菊池投手は、松井選手との最初の出会いのことを今でも鮮明に憶えている。4年前、それぞれ別々に行っていた自主トレの場所が、たまたま同じだった。気になって、トレーニングの内容を見ていると、「股割りのように足を開き、腰を落とし、コロコロコロと球を転がして、拾って、投げる。そんな、小学生がやるような基礎練習を、何時間もやってたんですよ。あれだけ守備が上手い人が、めちゃくちゃ地味なことを、『まだやるの?』とこっちが思ってしまうぐらい延々と続けてて。ものすごい衝撃を受けましたね。でも、それを見て、基本がいかに大事かを学びました」。

 一方で、松井選手にとっても、菊池投手は楽天時代から一目置く投手だ。「現に今、日本で一番良い投手。身体のことにしてもそうですし、左投げという部分でも、いろんなことを勉強している。そういう話を聞くと、歳はぜんぜん下でも、本当にすごいなぁと思います」。

「目指すところは、まだまだ上なのでね」

 9月26日、その松井選手が正式に今季限りでの引退を表明した。ミーティングの場で突然本人から発表され、「まさか……心の準備が何もできていなかった」と、菊池投手はショックを隠せなかった。「ずっとここにいると忘れてしまいがちだけど、引退とかが決まると、改めて、小さい時から本当に憧れていた選手と、こうして野球ができているということが、特別な時間だったんだなと感じます。一日一日、一緒に野球ができる喜びを感じながらやりたい」。残りの貴重な日々を、1分1秒、大切に過ごそうと誓う。それが、大きなモチベーションになっていたことは言うまでもない。

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 優勝が決まり、辻発彦監督に続き、松井選手は7度、札幌ドームの宙に舞った。その後行われたビールかけでは、若手以上に弾け騒ぎ、喜びを爆発させた。「もう、十分楽しんだので。これ以上楽しみすぎると、疲れちゃう(笑)」翌日、ジョークを交えながらも、すっぱりと気持ちは切り替わっていた。「目指すところは、まだまだ上なのでね」。

 唯一、叶えられていない、『ライオンズでの日本一』。その目標達成に向かって、最高の仲間たちと現役最後の挑戦に向かう。

 念願のビールかけで、チームの絆はまた一段と強固なものになった。「CS、日本シリーズと、このメンバーで一日でも長く一緒にできるように、チーム一丸となってやっていきたい」。そして、「稼頭央さんに花道を!」。

 初めての優勝体験で、全てが新鮮な経験を積んでいる選手が多いヤング・ライオンズ。今、最高の結束力をもって、その先の、まだ見ぬ日本の頂きを目指していく。

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