9月18日vs日本ハム戦で、西武は今季のチーム総得点を725点とし、2004年に記録した球団のシーズン最多得点718点を更新した。その、史上最高打線の中で、ひときわ輝きを放ち続けているのが、開幕から打順3番に座る浅村栄斗選手だ。特に、優勝への足固めが大事となる終盤戦に入ってからの活躍は圧巻で、9月は打率.347、3本塁打、15打点。得点圏打率は5割をマークする(9月20日終了時点)。

 浅村選手といえば、どうしても忘れられない言葉がある。

「エグい数字を残したい」

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 新主将に任命され、念願の背番号『3』を継承した、昨年の開幕前の言葉である。実際、昨年も5月12日vsオリックス戦で自己最多の1試合7打点を記録するなど、発言に違わぬ数字を残した部分もあったが、「前半は良かったのですが、良すぎた分、ホッとした部分があって、後半落ちた。良い時も悪い時もある中で、1年間通して継続できないと」と、完全には満足できてはいなかった。

 だが、今年は違う。9月20日終了時点までで、打率.318、本塁打29、打点117は、いずれも打点王のタイトルを獲得した2013年を超え、すでにキャリアハイの数字となっている。さらに言うと、安打数、得点圏打率ともリーグ2位を誇っており、まさに「エグい」活躍で首位チームを牽引し続けてきた。

 好成績の要因を、本人は「打ち方を少し変えたこと。構えた時が、今までと違う」と話す。開幕から好調だったが、5月末から不調期が訪れ、5月31日からは16打席連続無安打という苦境も味わった。不振脱出のために試行錯誤をした結果、6月5日vsDeNA戦から、思い切って構えを変えることを決断。これが奏功し、5打数4安打2本塁打4打点の大暴れとなった。以来、「いい感じでイメージ通り打てたので、その形を維持しています」。

本塁打、打点など、すでにキャリアハイの数字をマークしている浅村栄斗 ©文藝春秋

チームメイトが語る浅村の凄さ

 進化を続ける28歳強打者の姿を、チームメイトでもある名打者たちは眩しく見つめている。数々のタイトルを獲得してきた松井稼頭央選手が「才能はもちろんですが、相手投手の研究、絞り球なども含め、状況を考えた打撃がすごい。その状況、状況で、視野が広い。率も残せて、本塁打も打てて、本当にすごい」と絶賛すれば、シーズン安打日本記録保持者である秋山翔吾選手は「『ここぞ』のところの勝負強さは、他の選手とは違う。前を打つ打者としては、後ろで還してもらえるから、『ここはどんな状況からでも塁に出よう』と思える」と、頼もしさを口にする。

 さらに、4番打者として、今季開幕から600打席近くも真後ろから3番・浅村選手の打席を見て、打席に入り続けてきた、本塁打ランキング独走中の山川穂高選手は、その凄さを次のように絶賛する。

「浅村さんが、この球をこう打ったとか、こういう打ち方もあるんだとか、それが自分にできるかできないかは別としても、めちゃくちゃ参考になります。得点圏での打ち方がすごく上手いですし、全くブレない。結果として、ゲッツーになることはあったとしても、それはセンターラインにしっかりと打てている証拠。常にセンターから右中間方向に強い打球が打てるというのは、いつも参考になるなと思っています。

 僕の意見ですが、浅村さんの一番の凄さは、バットコントロールだと思います。本当に柔らかい。インコースからアウトコース、高め低めと、打ち方がすごく上手だと思います。それと、1日1安打を出す技術も、すごく高いと思います。見ていて、少し調子が良くなさそうだなと思った日でも、1本出すんです。1日1本、3打席1安打1四球を毎日続けていたら、打率は落ちないですし、その中で、たまに3〜4安打などの日があったら、打率が一気に上がる。で、またそこから1日1本、の繰り返し。だから、ずっと3割をキープしていますよね。それに加え、あの勝負強さ。とにかく、とんでもなくレベルの高い技術があると思う。とても真似できない部分が沢山あります」。