世界中で過熱するAI覇権争いの最前線で起きている“異変”について、今年6月にフランス・エビアンで開催されたG7サミット(主要7カ国首脳会議)のAI企業首脳会合に日本代表として出席し注目を集めた「Sakana AI」の共同創業者・代表取締役社長の伊藤錬氏(48)が、9月10日発売の月刊「文藝春秋」10月号に寄稿した。同号よりスタートする新連載「世界と戦う『AIインテリジェンス』」の第1回で、業界を覆う“停滞”のリアルと日本企業がとるべき勝ち筋を明かしている。
オープンAIのサム・アルトマンCEOら世界のトップと並んでG7の議論に参加した伊藤氏は、元外交官という異色の経歴の持ち主でもある。首相通訳官や日米安全保障の交渉にも従事した外交官時代に培ったインテリジェンス(情報収集・分析)を武器に、カオスの最前線を見つめる同氏が指摘するのは、世間の熱狂とは裏腹にAI業界が直面している現実だ。
〈「モデルを大きくし、より多くのデータと計算資源を投入すれば、劇的な性能向上が続く」という単純な成長物語は、2025年に曲がり角を迎えたのです。一般の利用者にもひと目で分かる飛躍が少なくなったという意味で、私はこれを一種の“停滞”と捉えています〉(連載本文より)
これまでAI業界を支配していた「大きければ、大きいほどよい(The bigger, the better.)」というスケーリング則に限界が見え始め、AGI(汎用人工知能)の実現時期についても、AI研究者や業界の有力者から慎重な声が相次ぐようになっているという。
伊藤氏によれば、AI開発は今、試験問題を解く「前半戦」から、社会で実際に役に立つかを問われる「後半戦」へと移行している。
米国の巨大テック企業が汎用AIの開発に数十兆円規模の莫大な資本を投じる中、伊藤氏率いるSakana AIはいかにして巨人たちと戦い、創業わずか1年で国内最速のユニコーン企業へと成長したのか。巨人と同じ土俵では戦わない「ドメイン(領域)特化」の戦略や、日本企業が持つべき「バイブス(文脈)」の重要性など、その知られざる全貌が明かされている。
伊藤錬氏の新連載「世界と戦う『AIインテリジェンス』」第1回は、9月10日発売の「文藝春秋」10月号で12ページにわたり掲載。先端AI「ミュトス・プレビュー」の商用リリース見送りの背景や、東大入試問題にみるAIの現在地、MITのレポートが示す「95%が失敗する実装の壁」のほか、新モデル「Fugu(フグ)」に込められた設計思想などについても綴っている(「文藝春秋」の電子版「文藝春秋PLUS」では9月9日より先行公開)。

