2018年9月30日、日本列島を強力な台風24号が直撃した。この台風によって、全国各地で停電が発生する事態になった。九州では約30万軒、西日本では9万軒以上、東京を含む関東地方でも50万軒以上が停電に見舞われた。ちょうど沖縄で実施されていた知事選挙でも25万軒以上で停電が起き、投票所51カ所では電気が止まった中での投票となった。

 また、9月6日に41人の死者と681人の負傷者を出した北海道胆振地方中東部を震源とする北海道胆振東部地震でも大規模な停電が起きたことは記憶に新しい。北海道全域で295万戸が停電になり、全国的にも電力が失われた札幌の様子などが大々的に報じられた。直接、地震の影響がなかった北海道の各地域でも、停電によって市民生活や経済活動が脅かされることになった。原因は、地震によって、発電所が停止したり、送電線が破損するなどしたためだった。

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サイバー攻撃が大規模停電を引き起こす

 最近頻発しているこうした大規模な停電は、台風や地震でなくとも起きうる可能性がある。その誘因のひとつが、サイバー攻撃だ。

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『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(山田敏弘 著)

 世界の政府関係者やサイバーセキュリティ関係者たちはずっと、電力網などへのサイバー攻撃が大規模停電を引き起こしかねないと警鐘を鳴らしてきた。そして現実に、2015年と2016年には、2度にわたりウクライナでサイバー攻撃による大規模停電が発生している。そうしたサイバー攻撃による大規模停電が、例えば電力使用量と依存度が高い東京のような大都会で起きたら一体どんな事態になるのだろうか。世界で初めてサイバー攻撃による大規模停電を経験したウクライナの例を参考に、シミュレーションしてみたい。

 ウクライナで大規模停電が発生したのは、凍てつくような寒さが続いていた2015年12月23日のことだった。その詳細は、NATO(北大西洋条約機構)やセキュリティ会社、海外メディアなどが様々な角度からまとめている。