今年6月20日に、91歳で亡くなった美輪明宏さん。その素顔と肉声を、編集者として美輪さんの担当を10年にわたって務めてきた、朝日新聞編集委員の後藤洋平氏が語った。
◆◆◆
「『私も愛してます』でしょ!」
美輪明宏さんの言葉を、10年超にわたって預かってきた。
初めて会ってから何年か経過した頃のこと。人生相談に対する美輪さんの回答原稿を私が整えて提示したところ、美輪さんは不意に言った。
「愛してるわよ」
最初は思いがけない言葉に驚いて焦り、狼狽して、とっさに「あ……ありがとうございます」と返した。すると美輪さんは、少しあきれたように、けれど楽しそうに笑った。
「あなたね、私に『愛してる』と言われて、『ありがとう』だなんて返すもんじゃありませんよ」
では、どうお返しすればいいのでしょうか、と尋ねると、間髪を入れずに返ってきた。
「即座に『私も愛してます』でしょ!」
私が朝日新聞週末版「be」の人生相談「悩みのるつぼ」で、美輪さんの回答の担当編集者になったのは2015年の春のこと。相談者から届いた手紙を読み、選別して美輪さんに伝え、回答を聴いて原稿に整える。だいたい月に一度掲載の企画の作業は、単なる聞き書きではなく、美輪さんの思い出話や生き方、政治などに対する考えに触れることのできる貴重な時間でもあった。
美輪さんの回答は、ときに厳しく、ときに痛快で、しかし最後には、その人が自分の尊厳を取り戻す場所へ連れ戻したり、何か大切なものに気づくきっかけになるのではないか、という内容が多かった。その芯を損なわず、正確に読者へ届けること。それが私の仕事だった。
