「豊田章男会長からはいつも言われます。『もっと技術屋にチャレンジさせろ』と。会長も、上司の言うことを聞かずに『俺はこれをやりたいんだ』と訴える連中がウヨウヨいる現場であってほしいと考えています」
世界販売台数1位を堅持するトヨタ自動車において、研究開発部門のトップを務める中嶋裕樹副社長兼CTO(最高技術責任者)が、月刊「文藝春秋」10月号(9月10日発売)で、ジャーナリスト・井上久男氏によるインタビューに応じた。そこで中嶋副社長が明かしたのは、自動車業界が100年に一度と言われる変革期を迎え、その荒波に挑戦できる人材をどう育てるかという課題だった。
薄れつつある「モノを作る前に人を作れ」という精神
「ベースとなる優れたプラットフォームがあるため、ゼロからモノを作らなくても、部分的に少し変えるだけで良い製品が開発できてしまう。言い過ぎかもしれませんが、コピペで仕事ができる時代になってしまった」
かつてトヨタが重んじた「モノを作る前に人を作れ」という精神は薄れつつあり、現場には上司の指示に従って正解を待つ雰囲気もあるという。
「最前線の開発現場に私が行った際に、何か相談を受けたとします。『こんなことをやってみたら面白いのでは? 某メーカーからこういうことを聞いたから、検討してみたら』とサジェスチョンをして、1週間後ぐらいに現場へ行ってみると、『副社長命令で言われたので、これを粛々とやっています』と言うわけです。あくまでも一案として話したことが、命令として捉えられている」
この現状に最も苛立ちを募らせているのが、豊田章男会長その人だった。
今年1月の東京オートサロンでは、「社内抗争勃発」と題して、「モリゾウ(豊田会長)と一緒にやらずにいいクルマだけつくりたいというエンジニアもトヨタにはたくさんいるんです。そいつらを代表しているのが私です」と中嶋副社長がケンカをふっかけた。会長VS副社長のケンカに、会場は大盛り上がりだった。
「私が会長と激論してみせたのは、世間に面白おかしくアピールするのが目的ではなく、あれは完全に社内に向けたメッセージなんです」
「社内抗争」と人材育成の関係とは何か。「文藝春秋」10月号(9月10日発売)、および電子版「文藝春秋PLUS」に掲載された「トヨタ副社長『章男会長とのケンカの真相をお話しします』」には、豊田章男会長の考える人材育成や、自動運転を含めた次世代車開発の苦労なども語られている。


