2006年4月10日未明。東京・文京区の一軒家で、当時28歳だった安田種雄さんが血だらけの遺体で発見された。傍らには刃物があったが、十分な捜査も尽くされないまま、警察は早々に「自殺」と判断し、捜査はいったん幕を閉じた。

 しかし、遺族の時計の針は止まったままだ。遺体からは自死を示す「ためらい傷」すら見つからないなど、不審な点も多かった。

28歳で亡くなった安田種雄さん(写真は遺族提供)

「この20年間、種雄が自殺と決めつけられたことが悔しくて悔しくて……。真相が分かりませんから、いまだに納骨できず、線香もあげていません」(安田さんの母親)

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 遺族は真相解明を求め続けてきた。

 事態が動き出したのは2018年。捜査資料を分析した警視庁大塚警察署の女性刑事らが、ナイフへの血の付き方などに着目。自殺にしては不自然だと指摘し、再捜査が開始された。

 警察は、種雄さんの元妻・X子さんを取り調べたが、当時の捜査関係者が懸念していたのは、彼女の「現在の夫」の存在。のちに政権の中枢で“影の総理”と称された自民党の衆院議員・木原誠二氏である。

木原氏 ©文藝春秋

 現場の刑事が確信を深め、取り調べが佳境を迎えた矢先、捜査は突如打ち切られる。ある捜査員は、「週刊文春」の取材に対し、「旦那が国会議員じゃなかったら、絶対逮捕くらいできるよな」と語った。

 沈黙を破ったキーマン・Y氏の告白

 事件から20年目の今夏、事件の鍵を握る重要参考人・Y氏がついに口を開いた。当時、X子さんと親密な関係にあり、事件当夜に現場へ駆けつけた人物だ。

「真相を知る当事者は俺しかいない」

 Y氏が語ったのは、あまりにも生々しい当夜の記憶だった。

 夜9時頃に鳴り響いた電話。受話器の向こうで震えるX子さんがこう告げたという。

「種雄君を刺しちゃった」

 現場へ急行したY氏が見た血だらけの遺体、X子さんを守るために行った証拠隠滅、遺族が駆けつけた際、カーテンの裏に隠れて小窓から逃走した緊迫の脱出劇。さらにY氏は、警察すら押収していなかった重大な物証である、「X子さんから送られた80通以上の手紙」と、葛藤を綴った「4冊の獄中ノート」を明かした。そこには二人が共有した“秘密”と、彼女が政治家・木原氏と出会い、Y氏から離れていくまでの経緯が克明に刻まれていた。

 Y氏の20時間におよぶ告白と提供した証拠品に記されていた新情報は、「週刊文春 電子版」で読むことができる。

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最初から記事を読む 政治家妻の夫がいきなり不審死、捜査が突如ストップ…「木原事件」とは何だったのか?