「ポイント・オブ・ノーリターン」。

 もうあなたは戻ることはできません。ふと歩いている道の先を見た腎臓くん。その視線の先には大きなバツ印が鎮座していた。大体こんな内容だ。

 なんだこれは! 呆気に取られてしばらく放心状態だったが看護師の声で我に返る。「先生がお待ちです」。僕は診察室に移動した。腎臓内科の医師が僕の検査結果やらグラフやらが書いてある紙を見せる。「あなたは今、ここにいます」。

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 彼が指さしたのはあるグラフで、そこにはレッドゾーン(危険地帯)と書いてあった。「今からでもできることはまだあります。できるだけ進行を遅らせるのが大事です。ただ残念ながら腎臓は良くなるということはありません」。

 この日の出来事はデヴィッド・リンチの映画『イレイザーヘッド』の一場面みたいだった。なんだかチグハグで奇妙な感覚だった。

ダースレイダー氏(KADOKAWA提供)

命のタイムリミットは「あと5年」

 腎臓は良くならない。この事実が重く突きつけられた。

 腎臓は血液を濾過して余分な水分、老廃物、塩分を尿として体外に排出する臓器。血圧調整や赤血球の産生を促すホルモンの分泌、骨の強化といった役割もある。腎臓が悪くなると老廃物などが体内に留まってしまい、尿毒症を引き起こす。初期症状は疲れ、だるさ。進行すると吐き気、食欲不振、痙攣や意識障害が起こり、悪化すれば死に至る。

「このまま進行して何も手を打たなければ、あなたの命はあと5年ほどで危険な状態になりますよ」

 あと5年。デヴィッド・ボウイの歌が脳内で再生される。いや、そんなドラマチックではない。もちろんこのあとには「だからこそ手を尽くしましょう」となるわけだが、言葉のインパクトは大きい。

 そして、この時打つべき手というか打たざるを得ない手として提案されたのが人工透析だ。

 だが、この時点での僕の透析のイメージは緩やかな死のようなものだった。かつては透析患者の寿命は一般の約半分だと言われていた。くう、さあどうする? とりあえず逃げなきゃダメだ!

次の記事に続く 「命に関わる状態です」ツアー中に体調悪化→救急搬送…〈脳梗塞、糖尿病、腎不全、片目失明〉の東大中退“眼帯ラッパー”(49)が、それでも“人工透析から逃げるワケ”