「人工透析が始まったら、僕の人生は終わってしまう」 。

 その強い恐怖から、医師の忠告を無視して独自の「逃走経路」へ飛びついた40歳の頃 。糖質制限を盲信し、激痩せしていく体に鞭打って過酷な音楽ツアーを強行するが、見えないところで命のカウントダウンは加速していた 。そして沖縄から帰宅後、ついにベッドから動けなくなり救急車を呼ぶことに―― 。

 脳梗塞、糖尿病、腎不全、片目の失明……常に病と共に生きてきた東大中退のラッパー・ダースレイダー氏(49)の著書『セルフ透析はじめました』(KADOKAWA)の一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)

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写真はイメージ ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

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糖質コントロールの罠

 僕は自分のバンド、ベーソンズで『5years』という曲を作った。5年後の自分に会いに行く。この時ちょうど40歳。45歳になること。これが逃走目標だ。この時点では何もしなくても5年後、そして透析を始めても同じ運命じゃないかと思い込んでいた。

 知人の看護師が透析は絶対ダメ! やらないで良い方法もあるからと僕に逃走経路を提案してくれた。僕は飛びついた。それまで通っていた病院に行くのをやめて、新しい医師の診察を受けることにした。

 その医師は糖質制限による糖尿病コントロールを提唱する人だった。すごい人気で病院の予約を取るのも大変だった。

 僕は炭水化物を全部やめてタンパク質中心の食事に切り替えた。肉を食べ、バターを齧り、そしてプロテインのチョコレート味をミルクに混ぜて飲んだ。体重はみるみる減っていく。ただ目的はダイエットではない。糖質を摂っていないので血糖値は低く抑えられていた。

 タンパク質を摂ってケトン体の数字を増やせば透析も回避できると説明されていた。だが、ここがうまくいかない。そして、この方針にこそ危険が潜んでいたのだ。

ダースレイダー氏の新著『セルフ透析はじめました』(KADOKAWA、2026年08月20日発売)。定価は2090円 (本体1900円+税)。

 この時期、僕はエネルギー不足で疲れやすく、痩せ細っていた。すると診察を受けていた医師が、これからは医療コンサルになるので診断はしないと言ってきた。引き継ぎの医師は糖質制限を専門にした人ではなかったので、同じ治療方針を持つ医師を探して会う予約をした。

 ここで1ヶ月ほど治療の空白期間が生まれた。ちょうど音楽が忙しくなっていた時期で大阪、京都、福岡、沖縄とツアーを回っていた。ツアーの途中で体調が急速に悪化した。気持ち悪くて何も食べられない。

 でもライブをすると回復してしまう。アドレナリンが出ることで錯覚が起きてしまうのだ。今、これを書いていても恥ずかしくなる。食いしん坊の僕が福岡でも沖縄でも何も食べていない。その時点で異常だろ! 一体僕は何から逃げているのか。