課金すると遠隔操作で「大人のおもちゃ」が起動し……
大野は言った。
「このサイトが人気なのは、オンラインサービスならではのスキルを駆使したサービスを提供しているからなんです」
彼が示したのは、ライブ配信画像の横にあるサービス機能だった。コメント欄やチップ機能の「投げ銭」の他に、「大人のおもちゃ」という機能がある。
大野によれば、視聴者がこの「大人のおもちゃ」をクリックして課金すれば、遠隔操作で画面の向こうのアダルトトイが振動し、配信者にリアルタイムで刺激を与えることができるという。
大人のおもちゃの料金は時間や動きによって細かく決められており、1回10秒前後で数百円、それ以上になると数千円になる。振動のバリエーションも「低」「中」「高」「超高」「ランダム」「ウェーブ」「パルス」など多数あり、それぞれ料金体系がわかれている。
しばらく視聴していると、大野が言うように、視聴者がひっきりなしに投げ銭や大人のおもちゃ機能に課金していた。そのたびに配信者の女性が淫靡な声を上げて反応し、コメント欄にはそれを喜ぶ視聴者の言葉が無数に書き込まれる。とにかく市場が大きく、キックバック率は約55%なので2時間で200万円稼いでる人までいるという。
会議室でパソコンを見ながら、これが若者が日常的にアクセスするアダルトコンテンツの最前線なのかと思うと暗澹とした気持ちになった。
大野は話す。
「このライブチャットのサービスの中にもたくさんのAIが入っているはずです。ただ、僕らエンジニアが開発しているのは、ライブチャットで配信している女性に対して使えるリアルタイムの顔入れ替えソフトです。
ライブチャットで儲かるかどうかは、顔の良し悪しにかかっています。だから、チャット内でその顔をリアルタイムで美人にすることができるソフトを開発できれば、より儲けられるということです」
AIが可能にするライブチャットの未来
静止した裸の画像に顔だけを違和感なく入れ替えるアプリはすでに出回っている。だが、ライブチャットのように細かく動き回るリアルタイム動画に顔だけを自然に付け替えるのは簡単ではない。角度にズレが生じたり、立体性が損なわれたり、大きさや色に違いが生じたりすることがある。この微妙性が極めて難しいが、うまくいけば美人ばかりを有するライブチャットプラットフォームを作れるというのだ。
大野はつづける。
「顔に関しては完全に別人にするわけではありません。配信者の顔をベースにして、こちらが設定する美女の顔を何対何かで割って、現実には存在しない女性を作るんです。チューニングさえうまくいけば、美人を作ることはできます。あとは、それをどこまでリアルタイムの動きに合わせて自然に近づけるかです。
顔を変えるメリットは、配信者の容姿を変えるだけでなく、顔バレの心配をなくせることにもあります。配信者の中には既婚者や兼業も多いので、身近な人に顔バレすることを一番恐れている。そのリスクをなくせれば、これまで配信を躊躇っていた人も取り込めるようになる。
さらに言えば、今後は顔だけじゃなく、体の入れ替えも重要になってくるはずです。これが完成すれば、バストやヒップを大きくするだけでなく、黒人を白人に変えるとか、50歳の体を20歳のそれに変えるといったことが可能になる。極端な話、東南アジアの60歳のおっさんが、AIを使って20歳の金髪美女に変身してライブチャットで配信して金を稼げる時代が来るんです」
こうしたAIソフトもオープンソースAIを基盤にして開発される。ただ、ChatGPTのようなクローズドAIをまったく使わないわけではなく、大野の場合はコードを書くために利用しているという。



