映画をきっかけに『ちい活おじさん』が誕生
一方で、この映画をきっかけに「ちいかわ」に沼ってしまった人々もいる。中高年のオジサン層だ。
「原作の世界観を忠実に再現した映画のクオリティが話題を呼び、従来のファン層の20〜50代女性だけでなく、『ちいかわ』を知らなかった60〜70代男性が劇場へ足を運ぶ現象が起きています。グッズを買い求めるファンも増え『ちい活おじさん』という言葉も誕生しました」(中山氏)
作家の糸井重里氏(77)やお笑い芸人のなだぎ武氏(55)といった著名人も映画に魅了されたことを明かし、SNSで自身の「ちい活」を発信している。
「ちいかわ」ファンでライターの目崎敬三氏も、「今回の映画の物語や構成は、黒澤明監督の『七人の侍』を彷彿とさせる」と絶賛する。
「私の周りでも60代くらいの男性たちが続々と映画を鑑賞し、感想をSNSで共有しています。中には80年代のSFゲームを引き合いに出して作品を語る友人もいました。男性ファンほど、『自分がなぜちいかわにハマったか』を分析し、考察を楽しむ傾向があるように感じますね」
文学作品や社会問題に重ねて考察が加速
ネット上でもドストエフスキーの『罪と罰』といった文学作品や、労働や格差、ウクライナ情勢といった社会問題に重ねて考察される本作。
中山氏はこの「考察」にこそ中高年が熱狂するポイントがあると考える。
「『ちいかわ』はファンシーなキャラクターの日常だけでなく、『討伐』という命懸けの労働や、『でかつよ』と呼ばれる敵の存在といった過酷な現実や不条理が“毒”として描かれる作品です。現代社会の投影や風刺としても解釈可能なこうした物語の背景が、批評的な目線でアニメを鑑賞してきた中高年の琴線に触れたのではないでしょうか」
アニメ関係者が続ける。
「映画製作には原作者のナガノさんが積極的に関わり、キャラの動きや表情にも細かく指示を出したと聞きます。観客に想像を委ねる余地を残した引き算の台詞や演出も、様々な解釈ができるようにあえて狙ったものでしょう」
巷ではコラボ商品やグッズの争奪戦が激化。日本に止まらず、海外にも勢いを伸ばす「ちいかわ経済圏」。まだまだ巨大になりそうだ。
