等身大の主人公を描きたい

──主人公である安達3尉のキャラクターを作画するにあたり、心がけられた点などありましたらお聞かせください。 

柏葉 自衛官は僕ら一般人からみたら、身体的にも戦闘に関してはやはり超人だと思うんです。それにマンガというエンタメ要素が入ってくると、どうしても超人的な活躍をさせたくなる。その傾向が行き過ぎないように、ブレーキを掛けないといけないところでしょうか。人間としての安達に注視し続けないと、本質を見誤ってしまう危険があります。

──続編では安達の視点だけでなく、ワグネル兵の視点からも描かれています。その作画について、心がけた点などありましたらお聞かせください。

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柏葉 今回はロシア軍に加えてワグネル兵と民兵部隊が登場してます。彼らの装備を象徴化し、パッと見でそれらの見分けがつくように心がけました。本来であれば戦闘服も、ロシア軍やワグネル兵も迷彩柄を着用している可能性が高いと思うんです。しかし、それだと自衛隊と見分けがつけにくくなる。そこで、ロシア軍側は迷彩のない無地としてます。

 

 もちろん、リアルとわかりやすさを同時に満たすことが最善ではあるのですが、専門用語も多く出てくる中で、ミリタリーに詳しくない方でもついてこられるように苦心しています。

──続編では自衛隊員だけでなく、保健師の南など女性キャラも登場します。その作画について、心がけた点などありましたらお聞かせください。

柏葉 女性キャラ、難しいですよね……苦手なんです(笑)。原作では指定がなかったのでちょっと気の強そうな雰囲気も持っている、宮﨑あおいさんを参考にしました。似てるかなぁ……。

 

苦労した火災のシーン

──今回は釧路における戦いが主な舞台です。市街戦の描き方について苦労した点などありましたら、お聞かせください。

柏葉 部隊や作戦の描写も苦労した点なのですが、いちばん悩んだのは〈火災〉です。砲撃や爆発で起きた火災は、街であっても車両であっても、鎮火するまでにはそれなりに時間がかかるはずなんです。

 戦闘地域では、消防に関する人員も不足しているはず。ただ鎮火や消防の時間を正確に物語に落とし込むと物語の展開が渋滞してしまう。その落としどころを探すのに、苦労しています。

 

──ロシアによるウクライナ侵攻は4年以上が過ぎた現在も終わりません。ロシアの侵攻と本作との関連について、北海道出身の漫画家として、思うところがあればお聞かせください。

シベリアに抑留されていた祖父

柏葉 僕の祖父はシベリアに抑留されていたんです。無事に帰ってくることができましたが、その時のことについて多くを語ることはありませんでした。祖父が亡くなった今、もっと話を聞いておけば良かったなと思います。どのようにして抑留され、戻ってこられたのか、当事者から語られる想いや当時の空気は時間と共にどうしても薄れていってしまうように思います。

 終わりをみせないロシアの侵攻に対する不安という空気が、筆を通して今作に反映されているのは間違いありません。〈今〉だけしか描けないかもしれない……そう思うと、改めて身が引き締まる思いです。

──続編を楽しみにしている読者へのメッセージをお願いします。

柏葉 1巻では〈群〉として所属する部隊の指揮下で行動していた安達3尉が、市内への戦闘に移り戦況が激化し混乱をきたす中、〈個〉としての選択をより多く迫られるようになっていきます。自衛隊の〈群〉としての規律を体験していない自分にその心境や葛藤が果たして描ききれるのか……頑張ります!

 

かしわば・ひろき

1975年北海道生まれ。2007年、デビュー。著書に『映像ディレクター越智は見た 世界怪奇録』(原作・越智龍太)など。

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次の記事に続く 《単行本発売》「帰る家なんてないから…」戦場でめぐり合った保健師が明かす“過酷すぎる境遇”